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トランプ氏の「高関税+所得減税」案に批判集中 岩田太郎
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バイデン米大統領が5月に、中国から輸入される主要製品の関税率引き上げを発表した。これに続き、今秋の大統領選でバイデン氏を破ることを目指すトランプ前大統領が6月に、関税をより広く高く引き上げて所得減税の原資の一部にする一方、自身が2017年に成立させた減税を恒久化し、さらに法人税率を引き下げると明言した。一連の関税引き上げと減税の現実性をめぐり、議論が進んでいる。
イエレン米財務長官は6月16日に出演した米ABC放送の番組でトランプ氏の提言について、「(収支均衡のため)関税率を、商品価格の100%を大幅に超えるものにせざるを得ず、(高インフレで)労働者層の生活は成り立たなくなり、米企業も大きな損害をこうむる」との考えを示した。
米ブルームバーグは6月13日付の記事で、「個人所得税の税収は連邦政府歳入の約5割を占め、歳入の2%に過ぎない輸入関税収入をはるかに上回るため、所得減税を相殺するのは難しい」と指摘した。
同記事は、米議会で25年にトランプ氏の提言をたたき台にした税制改革が議論される見込みだと伝えており、「そのような改革が実施されれば、世界貿易や消費者物価の不確実性が高まる恐れがある」と警鐘を鳴らした。
労働者層への恩恵が争点
トランプ前大統領の関税引き上げと減税の組み合わせが労働者層に打撃を与えると主張するイエレン財務長官だが、トランプ氏が「バイデン政権の経済失策が高インフレをもたらした」と非難していることに関して前述の番組で、「過去3年で物価が顕著に上昇したことは真実だが、インフレ率は非常に速やかに通常の物価上昇率まで落ち着いてきた。しかし、米国人にとってはインフレが依然…
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週刊エコノミスト
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