国際・政治 闘論席

科学研究者に迫る度を超した危険 池谷裕二

撮影 中村琢磨
撮影 中村琢磨

池谷裕二の闘論席

 科学者に対するハラスメントが急増している。特にコロナ禍以降、その頻度と凶悪度が前例のないレベルに達しているという。5月の国際科学誌『ネイチャー』には米ベイラー医科大学付属テキサス小児病院のウイルス学者ピーター・ホテス博士の例が紹介された。

 彼は新型コロナウイルスに関する世間の誤解や妄想を解くためにSNSで真摯(しんし)に情報を発信し続けた。結果、一部の人々から攻撃の標的となった。命の危険を感じたホテス博士は、警察や保安官事務所に緊急連絡先を登録し、公の場に出るときにはFBI(米連邦捜査局)から派遣された担当者を連れるなど警備を強めている。

 ホテス博士のケースは決して特別ではない。気候変動やワクチンを研究している人たちは、何十年も前から、多かれ少なかれ社会の無理解に苦しんでいる。この傾向がコロナ禍によって一気に加速した形だ。少なからぬ科学者たちが罵倒され、ソーシャルメディア、電子メール、電話、手紙で嫌がらせを受けている。不正行為に関する根拠のない告発で中傷されることもあるという。ホテス博士のように直接攻撃されることもある。

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