依存リスク高いオンライン賭博 吉岡貴史
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前回は日本人とギャンブルの歴史を紹介した。今回は現代社会でどんなギャンブルが依存のリスクにつながるのかを解説する。
アクセス容易、口コミサイト誘導か
日本では、古くは飛鳥時代から現代まで脈々と続く賭博(ギャンブル)。厚生労働省研究班の調査(2021年発表)によると、依存が疑われる人は推計で2.2%いるという。
現在は刑法で公営ギャンブルやパチンコを除く、いわゆる違法ギャンブルが取り締まられているが、根拠は戦後間もない最高裁判所の判例にある。そこには賭場開帳、及びギャンブルを禁止する根拠が挙げられている。「怠惰や浪費の習慣を生む」「勤労の美風を害する」「暴行、脅迫、殺傷、強盗などの犯罪を誘発」「国民経済の機能に重大な障害を与える」──の四つだ。この判例からも、ギャンブルには金銭問題、労働問題、治安の悪化などの懸念があったことがうかがえる。
趣味としてたしなむ程度を超えた、行きすぎたギャンブル利用が繰り返されることで懸念されるのがギャンブル障害(いわゆるギャンブル依存症)だ。米国精神医学会は診断基準を示している。
1.3万人調査で分析
ギャンブルへの依存は、本人だけでなく家族にとっても借金や家庭内暴力、アルコール乱用、うつ病など、こころや体をむしばむリスクが高まる。こうした悪影響を考慮し、医療提供体制の整備などを求める「ギャンブル等依存症対策基本法」が18年に施行された。
ここで気になるのは、数多い「ギャンブル」の中でも、何が依存症につながるような、行きすぎた利用につながっているのか、ということだ。筆者らの研究グループは、過去1年間にギャンブルなどを利用したことがあると回答した1万2955人を対象に、①どのようなギャンブルなどを利用しているのか、②(利用している場合)それが行きすぎたギャンブル行動(ここでは「問題ギャンブリング」と定義)に該当しているのか──をインターネットで聞いた(23年2月実施)。
①では、競馬、競輪、競艇、オートレース、カジノ、宝くじ、パチンコ、株式、先物取引、外国為替証拠金取引(FX)、仮想通貨取引などについて回答が集まり、オンラインとオフラインが両方あるものはそれぞれに分類した。②では、ギャンブル行動を判定する自記式のスクリーニング尺度(PGSI)を使い、「問題ギャンブリング」につながるリスクを分析した。
その結果、オンライン・オフラインのカジノや、競馬などの公営競技、仮想通貨取引──を利用している人は、それらを利用していない人と比較して、依存につながるリスクが高い結果となった。この研究は一時点での調査だが、特定のギャンブル利用を通じて依存症にならないための対策を講じる上で重要な意味を持つ。
一方、この研究で特筆したいのは、リスクの高い上位四つのうち、三つがインターネット上の「オンライン」であることだ。実際の店舗などを利用したオフラインと比較した時、オンラインギャンブルは自宅でも職場でもスマートフォン一つで利用でき、アクセスが簡単だ。さらに、個人がギャンブルの「コツ」や「経験」のほか、いわゆる「必勝法」と称するオカルト情報などを共有するコミュニティーサイトも存在し、これもスマホ一つで簡単にアクセスできる。オンラインギャンブルへの容易なアクセスや、コミュニティーから得た「コツ」は利用を加速させ、行きすぎた利用につながるかもしれない。
さらに、最もリスクが高いギャンブルが「オンラインカジノ」だったことも注目される。日本では法的に認可されておらず、日本からアクセスして利用する他国のオンラインカジノも日本の法律上は全て違法のものになる…
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週刊エコノミスト
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