経済・企業 チャイナウオッチ 中国視窓

中国経済に二つの逆風続きデフレ的状況 貿易・投資で世界経済に影響 久保和貴

上海市内ミシュラングルメフェスティバルには多くの人出があった(2024年6月) 筆者撮影
上海市内ミシュラングルメフェスティバルには多くの人出があった(2024年6月) 筆者撮影

 中国では6月8~10日の「端午節」の連休で、帰省や観光による人流増加が各地で報告された。同期間中の国内旅行者数は延べ1億1000万人で、前年同期比6.3%増、国内旅行消費は同8.1%増といずれも堅調に伸びた。筆者も連休中に上海市内を視察したところ、繁華街は多くの人であふれ、広場で開催されたミシュラン主催のグルメフェスティバルは、大変なにぎわいだった。

 他方、同期間中の不動産販売は弱い動きが続いた。中国当局は5月中旬から不動産購入支援策を相次いで打ち出しており、連休中にも効果が出ると一部に期待があった。ふたを開けると、物件の内覧や中古住宅取引は増加したものの、新築住宅販売は前年を下回った。

 中国の不動産市場は、工事完成前の予約販売が一般的だ。だが建設企業で資金不足が広がる今、家計は安心感を求めて完成済みの建て売り物件や中古住宅を狙って買うようになっており、完成前の予約販売には人が集まらないという、ミスマッチが起きている。当局も2年前に「保交楼(不動産の引き渡し保証)」政策、今年からは「白名単(ホワイトリスト)」政策で建設会社への資金供給と工事再開、ひいては予約販売の復活を企図してきた。しかし、大手建設会社の倒産や経営不振が相次ぐ中、家計の建設会社への信頼はいまだ回復していない。

 外部環境も厳しさを増す。6月上旬、トルコと欧州連合(EU)は相次いで中国製自動車への追加関税賦課を決定した。また、EUに先んじて米国は5月に中国製電気自動車(EV)に100%の制裁関税賦課を決定。さらに、トランプ氏が11月の米大統領選に当選した場合には、中国製品に一律60%の関税を課すと述べている。 …

残り697文字(全文1397文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

10月15日・22日合併号

歴史に学ぶ世界経済第1部 マクロ、国際社会編18 世界を待ち受ける「低成長」 公的債務の増大が下押し■安藤大介21 中央銀行 “ポスト非伝統的金融政策”へ移行 低インフレ下の物価安定に苦慮■田中隆之24 インフレ 国民の不満招く「コスト上昇型」 デフレ転換も好循環遠い日本■井堀利宏26 通商秩序 「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事