中国経済に二つの逆風続きデフレ的状況 貿易・投資で世界経済に影響 久保和貴
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中国では6月8~10日の「端午節」の連休で、帰省や観光による人流増加が各地で報告された。同期間中の国内旅行者数は延べ1億1000万人で、前年同期比6.3%増、国内旅行消費は同8.1%増といずれも堅調に伸びた。筆者も連休中に上海市内を視察したところ、繁華街は多くの人であふれ、広場で開催されたミシュラン主催のグルメフェスティバルは、大変なにぎわいだった。
他方、同期間中の不動産販売は弱い動きが続いた。中国当局は5月中旬から不動産購入支援策を相次いで打ち出しており、連休中にも効果が出ると一部に期待があった。ふたを開けると、物件の内覧や中古住宅取引は増加したものの、新築住宅販売は前年を下回った。
中国の不動産市場は、工事完成前の予約販売が一般的だ。だが建設企業で資金不足が広がる今、家計は安心感を求めて完成済みの建て売り物件や中古住宅を狙って買うようになっており、完成前の予約販売には人が集まらないという、ミスマッチが起きている。当局も2年前に「保交楼(不動産の引き渡し保証)」政策、今年からは「白名単(ホワイトリスト)」政策で建設会社への資金供給と工事再開、ひいては予約販売の復活を企図してきた。しかし、大手建設会社の倒産や経営不振が相次ぐ中、家計の建設会社への信頼はいまだ回復していない。
外部環境も厳しさを増す。6月上旬、トルコと欧州連合(EU)は相次いで中国製自動車への追加関税賦課を決定した。また、EUに先んじて米国は5月に中国製電気自動車(EV)に100%の制裁関税賦課を決定。さらに、トランプ氏が11月の米大統領選に当選した場合には、中国製品に一律60%の関税を課すと述べている。 …
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週刊エコノミスト
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