自ら認める“過剰生産”問題 西側からの批判ははねつける中国 岸田英明
6月14日に採択された、イタリアでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳宣言は、中国の「包括的な非市場的政策および慣行」への懸念を示し、「世界的な影響、市場のゆがみ、有害な過剰生産能力を生み、我々の労働者、産業、経済的強靱(きょうじん)性と安全保障を損ねている」と批判した。中国の過剰生産への西側諸国の批判は今に始まったものではないが、中国による一部製品の輸出急拡大を受け、足元で声が強まっている。
中国の主な反論は、①西側諸国は過剰生産能力を誇張し、発展を抑え込もうとしており、経済貿易問題を政治化させている、②電気自動車(EV)やリチウムイオン電池(LIB)、太陽電池などの中国の新エネルギー産業が世界をリードできているのは補助金のおかげではなく比較優位と市場競争の結果である、③関連製品の主要供給先は国内で、大規模輸出はしていない、④世界的規模で見ればEVや新エネ製品は供給不足で、将来の需要増も考えれば、むしろ生産能力の増強が必要──などだ。
両者の議論は、いろいろな意味でかみ合っていない。まず、西側諸国の批判はより広範な産業・製品が対象だが、中国は大方、EVや新エネ製品にしぼって反論している。また西側諸国は「今」の話であるのに対し、中国はあえて「将来」需要にも言及して生産能力の過不足を論じようとしている。
中国のEV、LIB、太陽光発電関連製品を合わせた輸出額は2021年の654億ドルから23年の1428億ドルへ、わずか2年で2倍以上に増えた、との統計こそあるものの、こうした数字をどう捉えるか、中国と西側諸国の評価が交わることは今後もなさそうだ。
全人代で「過剰」認める
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週刊エコノミスト
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