過剰生産能力問題で激化する欧米と中国の通商摩擦は日本のリスクに 真家陽一
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過剰生産能力問題を背景に、欧米と中国の通商摩擦が激化している。欧州委員会は2023年10月、欧州連合(EU)が中国から輸入する電気自動車(EV)に相殺関税(輸出国によって補助金を受けた輸入貨物に割増関税を課す制度)を視野に入れた反補助金調査を開始。24年4月には、3日に太陽光パネル、9日に風力発電装置に反補助金調査を始めた。EVについては6月12日、関税率を現行の10%から最大48.1%に引き上げると発表した。
米国政府は5月14日、EV、半導体、太陽電池、リチウムイオン電池などの戦略分野で、通商法301条に基づき、対中制裁関税率の引き上げを公表。EVが現行の4倍の100%、半導体と太陽電池が2倍の50%、リチウムイオン電池が3倍超の25%など、大幅な引き上げとなった。
中国に進出する欧米企業も過剰生産能力問題への警戒感を高めている。米国企業で組織する中国米国商会が2月2日に公表した「中国ビジネス環境調査リポート」によれば、会員企業にビジネスリスクを尋ねたところ、鉱工業分野では「米中関係の緊張の高まり」(66%)に続き、「過剰生産能力」(44%)が第2位に挙げられた。
また、欧州企業で組織する中国EU商会が5月10日に公表した「中国景況感調査」では、36%の企業が「過剰生産能力」があると回答。業種別では不動産セクターの低迷を背景に「土木・建設」が69%と最も多く、「自動車」(62%)、「機械」(55%)と続いた。
「政治的パフォーマンス」
一方で中国政府は、そもそも過剰生産能力の存在を認めていない。欧米からの指摘には根拠がなく、制裁措置は世界貿易機関(WTO)ルール違反と批判し…
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週刊エコノミスト
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