中国で不動産の在庫処理が本格化 地方政府が買い取り低コスト物件として活用 神宮健
中国政府は不振の続く不動産市場対策の一環として、住宅在庫や遊休土地の処理・活性化に本格的に乗り出した。共産党の中央政治局会議が4月末、既存の不動産在庫を消化し住宅の新規増加を最適化する方向を打ち出したことを受け、5月中旬、人民銀行、国家金融監督管理総局、住宅都市農村建設省などが関連政策に関する記者発表を行った。
背景には、販売待ち住宅の総面積が2023年末時点で3.3億平方メートルと積み上がったことがある。23年の販売ペース(予約販売を除く)では、解消に全国平均で約22カ月強かかる。これは16年初のピークとほぼ同水準で、特に地方小都市の状況が厳しい。
まず、既存住宅の在庫消化策をみると、地方都市の政府が、地方の国有企業を組織して住宅在庫の一部を購入し、保障性住宅(低中所得層の住宅難の家庭向けの低価格・家賃の住宅)にする。
人民銀行は、3000億元(約6兆4400億円相当、1元=約21.5円換算)の「保障性住宅再貸し出し」政策を発表した。全国展開する21銀行は地方都市の政府が選んだ地方国有企業向け貸し出しを実施、これらの企業は建設済み・未販売の商品住宅を購入し、保障性住宅として用いる。人民銀行は銀行貸出額の60%まで低金利資金を提供(再貸し出し)することから、5000億元の銀行貸し出しを生み出すと期待されている。
需給のミスマッチ解消
次に、遊休土地については、足元で不動産開発業者が使用権を購入したものの未開発、または工事を開始したが未完成の土地を、地方政府が適切な価格での回収・購入などで活性化する。具体的には、回収・購入後の土地を保障性住宅、公共サービス施設などに利用する。地方…
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週刊エコノミスト
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