上海株式市場で“マオタイ・パニック” 健在だった中国経済の“晴雨表” 奥山要一郎
有料記事
中国で高級白酒(バイジウ)の代名詞的存在「茅台(マオタイ)酒」の価格動向が話題だ。中でも代表的な「飛天茅台」(2023年物)の参考卸売価格は、おおむね1本2600~2800元前後(日本円で6万円前後)で推移していたが、5月ごろから下落基調となり6月には一時2200元を割った。
茅台酒の流通状況や価格推移は一部で「中国経済の晴雨表」ともいわれ、景気を占う指標としても使われる。同酒の製造元「貴州茅台酒」の株も大きく売られ、市場はちょっとした「マオタイ・パニック」に見舞われた。
白酒は中国発祥の蒸留酒。原料は主に、高粱(コーリャン)、トウモロコシ、小麦、もち米、うるち米、ジャガイモなどの穀物で、アルコール度数は50度以上の物が多い。宴会の場では、おちょこのようなミニグラスで「干杯(ガンベイ)!」と言いながら、文字通り「飲み干す」のが流儀だ。
飛天茅台(アルコール度数53度、500ミリリットルタイプ)の定価は1499元だが、その人気と希少価値の高さから常にプレミアムが付く。冒頭の参考卸売価格は中間ディーラーなど複数業者間での「取引値」に相当する。一般消費者の手に渡る時にはさらに値上がりし、年代物によっては定価の2倍以上の値が付くこともある。
今回の価格下落の背景としてはまず、6月のEコマース(電子商取引)販促イベント「618セール」で、大手の京東集団(JDドット・コム)などEC各社が販促を強化し、値下げ圧力が働きやすかった。また、夏場は元から白酒のオフシーズンで、加えて節約志向の高まりや接待需要の減少などで消費市場が全体的に不振なことも影響しているようだ。
衝動的な売り
株式市場でも動…
残り732文字(全文1432文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める