トランプ氏狙撃事件を“奇貨”とした習氏に「脳梗塞」説 金子秀敏
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米国のトランプ前大統領が7月13日、選挙集会の遊説中に狙撃され負傷した。大統領候補を決める共和党大会開始の2日前だった。この衝撃的なニュースは中国社会でも短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」などのインターネット上で瞬く間に拡散した。
米国内では 耳から血を流しながらこぶしを握りしめ「ファイト!」と叫ぶトランプ氏の映像がメディアで爆発的に拡散し、トランプ氏に有利な流れができあがったといわれる。
バイデン大統領には手痛い打撃だった。これまで民主党のバイデン政権が積み上げてきた米国の対中、対露強硬外交の土台が揺らぎかねない。
事件の3日前、ワシントンで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の共同宣言は、ウクライナを侵略するロシアと、ロシアを「決定的に支援」する中国を強く非難した。首脳会議にはNATO加盟国のほかに日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドのインド太平洋4カ国(IP4)が参加した。バイデン氏は「大成功だった」と上機嫌だった。その理由の一つが、IP4の参加だ。
米国については、ハワイから西の西太平洋はNATO条約の適用範囲外になっている。だが、中国軍は西太平洋や南太平洋へ進出を試みている。
これに対応するため、バイデン氏は米国と個別同盟関係を持つIP4とNATOのパートナー関係を構築した。その源流は、2021年6月、バイデン氏とジョンソン英首相(当時)が合意した「新大西洋憲章」にさかのぼる。
中国は「アジア版NATO」と呼び、反対しているが、民主党にとって重要な外交実績となっている。
バイデン氏は6月下旬、トランプ氏とのテレビ討論会で精彩を欠き、周辺から大統領選…
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週刊エコノミスト
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