外資誘致に動く中国政府 地方保護主義と不透明な法執行には要注意 神宮健
中国国外の企業による、対中直接投資が減少している。
2023年の対中直接投資(中国商務省「実際使用外資金額」)は約1.1兆元(約24兆円)で、前年比8.0%減少、24年上半期は4989.1億元で前年同期比29.1%と減少幅が広がった。
まず、世界の海外直接投資は、23年に前年比2%減少(国連貿易開発会議、UNCTAD)したように低迷気味だ。それに加え、貿易摩擦や地政学的要因などを背景に、フレンドショアリング(友好国や同盟国へのサプライチェーンの再構築)や、生産拠点の自国回帰といった世界的なサプライチェーン組み直しの影響もあるとみられる。
また、中国では人口構成の変化などを受けて賃金コストが上がり、労働集約型産業の直接投資が、東南アジアなどに向かう、従前からの動きも底流にある。
こうした中で中国政府は外資企業誘致を強化している。「外商投資法」(20年施行)と関連規則を整備した上で23年、内国民待遇確保、知的財産権保護、利便性向上、税制面の支援などの措置を打ち出した。24年3月には外資誘致・利用強化の行動案を発表。製造業分野における外資参入制限措置の全面撤廃、電信・医療などの分野の開放継続、科学技術革新分野での外資参入緩和の試行、より公平な競争環境の構築などを含む。
経済発展モデルの転換・産業の高度化を目指す中国が求めている外資は、もはや労働集約型産業ではなく、先進的な製造業・サービス業の企業だとうかがえる。実際、24年上半期を見ると、ハイテク製造業への直接投資は637.5億元と全体の12.8%を占め、前年同期より2.4ポイント上昇した。
また、23年には外資の研究開発センター設…
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週刊エコノミスト
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