大麻取締法改正で大麻草由来物質の医療利用が可能に 山田厚俊
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ドイツは4月、大麻の個人使用を解禁し、バイデン米大統領も解禁の意向を示した。日本でも改正法が施行される。何が起きているのか。
大麻草成分のうち「THCは麻薬、CBDは無害で有益」
5月下旬、東京・新宿の百貨店、伊勢丹新宿店メンズ館を訪れると、1階の売り場に「CBDサプリメント」という製品が陳列されていた。
CBDと聞いてピンとこない人も少なくないだろう。「カンナビジオール」という化学物質の略称で、「大麻草」に含まれる成分。大麻草はいわゆる違法薬物のマリファナのことだ。正確にいえば、大麻草のうち花穂(穂のような形で咲く花)、葉、未成熟の茎、根などを「規制部位」または「大麻」と呼び、大麻取締法は「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない」と定める(以下、譲り受けは購入、譲り渡しは販売と記す)。
ところが、厚生労働省麻薬取締部のウェブサイトは「大麻草の成熟した茎や種子のみから抽出・製造されたCBD(カンナビジオール)を含有する製品については、大麻取締法上の『大麻』に該当しません」と明記する。つまり、大麻草の成分を含む製品の一部は合法的に購入や使用ができるわけだ。
CBD製品を手に入れる理由は何か。同省監視指導・麻薬対策課が2022年に作成した文書はCBDについて「幻覚作用を有さず、抗てんかん作用や抗不安作用を有するといわれ、(中略)医薬品の主成分としても活用されている」と記す。海外にはCBD製品がよく知られている国もあり、同文書には「欧米を中心にCBD成分を含む様々な製品群が販売されており、市場規模が急速に拡大しているとされている」とある。
購入層は40~60代女性
国内でも市場規模が急増している。矢野経済研究所が22年に発表した「CBD製品市場に関する調査」によると、21年は小売金額ベースで、前年比1.9倍の約185億円だった。22年は同1.4倍の約259億円、25年は約829億円と予測した。調査対象の製品はオイル、サプリメント、グミ、クッキー、肌に塗るクリーム、美容液などだ。
ほかにもさまざまなCBD製品が売られているようだ。「楽天市場」で検索すると、「飲む美容・健康オイル」「果汁100%CBDグミ」「天然成分100%のマルチバーム」「小・中型犬用CBDオイル」といったCBDを含むとする製品がずらりと表示される。
伊勢丹で陳列されるCBDサプリメントの製造元はデンマーク企業のエンドカ。日本法人エンドカジャパンの広田拓郎社長に聞いた。
「安眠効果が期待できるオイルサプリメントや、肌に塗ると保湿などに優れているコスメティック(化粧品)など、農薬や化学物質を一切使用せずに栽培した原料を使う製品を取り扱っている。(日本での)売上高は年々伸び、リピーターが多い。メインの購買層は40~60代女性で可処分所得の高い人たち」
実は今、海外ではCBD製品どころか、日本では違法の大麻やその成分を含む製品を「非犯罪化」(使用などしても犯罪でなくすること)や合法化する国が出現している。
表は研究者20人が22年、国際学術誌に掲載した査読付き論文に収録された表を抜粋・和訳したものだ(日本から地理的に遠いアフリカと南米の諸国は省いた)。
大麻の使用を非犯罪化した国はタイ、スペイン、イタリア。ただし、論文の発表後、ドイツ国会で大麻の個人使用を認める法律が成立し、今年4月に施行された。独公共放送ドイチェ・ウェレがウェブサイトに載せた同1日付記事によれば、「18歳以上の人は大麻を使用する目的で最大25グラムを所持・運搬できるようになった」。
一方、タイは年内に娯楽用の使用を禁止する。タイ政府は22年、大麻を規制麻薬から除外し、娯楽用の使用が盛んになった。5月16日付のタイ英字紙『バンコク・ポスト』社説は「セター首相が(規制麻薬としての)再指定を強く求める理由は定かではない」としつつ、他の麻薬と同時に使用して健康を害した人がいたことを挙げた。
表に載っていない米国について、米議会調査局が公表した同2日付文書はこう記す。
「連邦当局は厳しく規制している。一方、州と属領の大半は過去数十年の間に大麻の包括的な禁止から逸脱し、大麻の栽培、販売、流通、所持を一部許可する法律を制定した」
同文書によれば、連邦規制物質法は連邦政府が認可した研究を除き、大麻の製造、流通、販売、所持を禁止している。
バイデン大統領は米国で非公式の「大麻の日」とされる4月20日、「大麻を所持していたというだけで、あまりに多くの人の人生が一変し、多くの州がもはや禁じていない行為で収監された。今こそそのような過ちを正す時だ」とツイートし、大麻を厳しく規制する連邦法を改正する意向を表明した。
日本も医療用解禁へ
日本を表の項目に当てはめると全項目が「×」、禁止…
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週刊エコノミスト
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