教養・歴史 歯科技工士だから知っている「本当の歯」の話

❼噛み癖を直して歯の寿命を延ばす⑴ 林裕之

 無意識の日々の動作が抵抗力や免疫力を弱め、虫歯菌や歯周病菌の餌食となってしまう。

>>連載〈歯科技工士だから知っている「本当の歯」の話〉はこちら

 歯ぎしり、噛(か)みしめなどの悪癖でダメージを受け続けた歯や歯茎は、第6回で指摘したように抵抗力も免疫力も低下します。こうして弱った歯や歯茎が虫歯菌や歯周病菌の餌食となってしまうのです。したがって、悪癖を自覚し是正することが虫歯や歯周病の予防になります。歯磨きとプロケア(歯科医で施される専門的なケア)だけでは不十分なのです。

 歯ぎしりや噛みしめは、咀嚼(そしゃく)筋や顎(がく)関節にもダメージを与えます。顎(あご)の疲れや顎関節症、首や肩のコリの一因になります。ストレスの多い現代人のほとんどが歯ぎしりや噛みしめを行っているといわれています。

 歯ぎしりや噛みしめは無意識の行為なので、まず自分がしているかどうかを判定する必要があります。歯ぎしりは就寝中にすることが多く、キュキュッやギリギリなど音を立てます。家族や友人などに指摘されて自覚する場合が多いですが、アプリ(Do I Snore or Grind〈いびきか歯ぎしりか〉https://app-liv.jp/3698397/)で確認することも可能です。

 噛みしめは昼夜を問いません。音もなく、他人に指摘されにくく自覚している人は少数です。

 歯ぎしりも噛みしめも就寝中にしていると、目覚めた時に顎やこめかみあたりに疲れや痛み、だるさを感じたり、口が開けにくかったりします。

 就寝中の対策はマウスピース(ナイトガード)をするのが一般的です。癖を治すというより、歯や顎へのダメージを極力少なくするための装置です。歯科医院で作ってもらえます。ただし、装着して噛んだ時に歯全体が均一に当たるように調整しない歯科医は避けましょう。また、市販のマウスピースは絶対に避けましょう。

 起きている時もするのが噛みしめです。特に集中したり、緊張したり、ストレスを感じた時にしがちです。いずれにしても無意識にしてしまうので、まず「噛みしめない」と書いたメモを机やスマホ、パソコン、鏡など普段よく目にするところに貼っておき、歯の状態をチェックする癖をつけます。噛みしめていたら歯を離すことを習慣化するのです。

頭痛、肩コリの原因

 私も30年ほど前は噛みしめの癖があり、主に右奥の上下の歯でぎゅっぎゅっと噛んでいました。そのたびにこめかみあたりの筋肉(側頭筋)がピクピクと動くので周囲の人からは怒っていると思われがちでした(まったくそんな意識はありませんが)。

 また、片頭痛が頻繁にあり頭痛薬が手放せません。常に頭に大きな輪ゴムが巻かれているような感じもありました。首や肩のコリもつらかったですね。噛みしめの害を知らずにいたので、長い間この悪癖を続けていました。

 噛みしめの害を知り、噛み合わせの調整をし、噛みしめないように意識して過ごしました。すると、片頭痛は激減、首や肩のコリも軽減、表情も穏やかになりました。しかし、長年ダメージを与え続けた右の上下の第2大臼歯は歯周病を発症し、治療を重ねましたが、どちらも抜歯となり…

残り685文字(全文1985文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

10月15日・22日合併号

歴史に学ぶ世界経済第1部 マクロ、国際社会編18 世界を待ち受ける「低成長」 公的債務の増大が下押し■安藤大介21 中央銀行 “ポスト非伝統的金融政策”へ移行 低インフレ下の物価安定に苦慮■田中隆之24 インフレ 国民の不満招く「コスト上昇型」 デフレ転換も好循環遠い日本■井堀利宏26 通商秩序 「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事