日銀の7月利上げを難しくしている理由 愛宕伸康
日本銀行が利上げに踏み切るとすれば二つのケースがある。一つは2026年度にかけて「物価安定の目標」が実現すると想定している経済・物価見通しに沿って現実の指標が推移し、その見通しの確度が高まったと判断した場合。もう一つは物価上昇率が円安などの要因によって自分たちの物価見通しより上振れるリスクが高まった場合である。
後者が7月になる可能性は輸入物価などの動向を見る限り低い。あるとすれば前者だが、足元の経済指標はむしろ日銀にとって逆風となっている。まず国内総生産(GDP)だ。内閣府は7月1日、前期比年率マイナス1.8%としていた24年1〜3月期の実質GDP(2次速報値)を同マイナス2.9%に改定した。基礎統計の一つである「建設総合統計」の遡及(そきゅう)訂正が背景だが、これに伴い2024年度の成長率に対するベース効果が0.3%下振れた。
日銀の24年度実質GDP見通しは現在0.8%。7月金融政策決定会合(MPM)で公表される「展望リポート」でこのベース効果の下振れ分が下方修正されるだけなら、単なる統計上の技術的な調整であり、あくまで見た目の問題と割り切れる。見た目の問題という意味では、自動車の認証不正問題に伴う生産の一時的な下振れもそうかもしれない。一部車種に対する出荷停止措置が解除されれば回復するのは明らかだからだ。
ただ、そうだとしても、認証不正問題で落ち込みが予想される6月鉱工業…
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週刊エコノミスト
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