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設備投資の実像はGDPと短観のどちらか 斎藤太郎

 日銀短観をはじめとした設備投資計画が堅調であるにもかかわらず、GDP統計の設備投資は低調な推移が続いている。GDP統計の実質設備投資は2023年度の4四半期中3四半期で前期比マイナスとなり、23年度は前年比0.4%の低い伸びにとどまった。

 設備投資計画の強さに対し、GDP統計の設備投資が弱く見える理由の一つは、設備投資計画は名目(金額)で、GDP統計の設備投資は設備投資デフレーターで割り引いた実質で見ることが多いためである。

 23年度の名目設備投資は102.4兆円となり、コロナ禍前(19年)の水準を10%以上上回った。しかし、資材価格の高騰などから設備投資デフレーターが高い伸びを続けているため、実質設備投資は伸び悩み、コロナ禍前と同程度の水準にとどまっている。

 ただし、名目で比較しても両者の乖離(かいり)は顕著だ。GDP統計の名目設備投資と日銀短観の設備投資実績は連動性が高かったが、23年度は日銀短観の設備投資実績(含むソフトウエア・研究開発投資、除く土地投資)が前年比9.4%の高い伸びになったのに対し、GDP統計の名目設備投資は同3.7%にとどまり、日銀短観の伸びを大きく下回った(図1)。

 筆者は、日銀短観の設備投資計画は強いものの、建設費用の高騰や人手不足による工事進捗(しんちょく)の遅れなどから計画が下方修正され、両者の乖離が縮小することを想定していた。しかし、日銀短観24…

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週刊エコノミスト

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