チップレット普及による微細化・大判化で注目されるガラスパッケージ基板 津村明宏
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パッケージ基板の微細化・大判化に向けて、コア層にガラスの採用が進んでおり、国内外で開発競争が激化している。
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次世代の半導体パッケージ基板の開発が熱を帯びている。パッケージ基板とは、半導体チップとマザーボードの中間に配置される小型基板のことを指し、デザインルール(回路の線幅)が大きく異なる両者を電気的に接続する役割を果たす。先端ロジックチップでは、デザインルールが7ナノメートル(ナノは10億分の1)から5ナノメートル、5ナノメートルから3ナノメートルへと微細化が進み、これに伴ってパッケージ基板に形成される回路もライン/スペース(L/S)10マイクロメートル以下が求められるようになってきた。
加えて、生成AI(人工知能)の登場などによって、先端ロジックを機能ブロックごとに作り分けてパッケージ基板上に並列に配置し、あたかも1チップであるかのように機能させるチップレット技術が普及しつつあることで、パッケージ基板自体のサイズも50ミリメートル角から70ミリメートル角へ、将来的には100ミリメートル角程度まで大判化するのではといわれている。
こうしたパッケージ基板の微細化、大判化に伴って注目されている素材が「ガラス」である。既存のパッケージ基板は、ガラスクロスやフィラーなどに樹脂を含浸させた樹脂基板が採用されているが、このコア層と呼ばれる中心部分をガラスに置き換えようという研究開発が活発化しているのだ。その最大の理由が「反りに強い」こと。パッケージ基板が大判になればなるほど、樹脂であるがゆえに熱膨張係数の差から反りやすくなり、平坦(へいたん)性を保つのが難しくなるが、ガラスは反りに強く、樹脂よりも平坦性が高いため寸法安定性にも優れており、近年大きな注目を集めるようになった。
海外で巨額投資
その流れを加速させたのが、2023年にガラスコア基板の開発成果を発表した世界最大の半導体メーカー、米インテルだ。先端パッケージ技術の開発拠点である米アリゾナ州チャンドラーの施設内に、10億ドル以上を投じてガラス基板をベースにした研究開発ラインを構築済みで、装置・部材メーカーらとともに600以上の新たなプロセス、装置、部材などを開発してきたことを明らかにした。ガラスであればL/S5マイクロメートル未満への微細化や240ミリメートル角への大判化も可能と説明し、現在開発中である「18A」と呼ぶ1.8ナノメートルプロセスの次世代にあたるプロセス、時期としては20年代後半にも量産に適用したいと述べた。高性能AIチップやサーバー向けCPU(中央演算処理装置)向けに量産する考えであるほか、シリコンチップと光半導体を融合する光電融合技術のコア材料としての活用も視野に入れている。
この発表を受けて、他の企業からもガラスコア基板に関する発表が相次いで出てきた。韓国SKCの子会社として21年に設立された米アブソリックスは、6億ドルを投資して半導体パッケージ用ガラス基板の量産拠点を米ジョージア州コビントンに建設中だ。2期に分けて工事を行い、2.4億ドルを投じ…
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