GaNパワー半導体はEVやデータセンターの需要拡大で競争激化 津村明宏
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CO2排出や電力使用量をさらに削減するため、GaNパワー半導体の需要が拡大している。
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青色LEDの実用化で照明の世界に革命をもたらした窒化ガリウム(GaN)が、パワー半導体の世界で注目を集めている。シリコンウエハー上にGaNを成膜して製造されるパワー半導体は、シリコン製のパワー半導体に比べてスイッチング速度が20倍、充電速度も3倍速く、電力を最大40%削減できる。これに伴い、まずモバイル機器の急速充電器に搭載が進んだ。今後は、CO2排出量や電力使用量を削減できる点から、電気自動車(EV)のオンボードチャージャー(OBC)やデータセンター内の電源などにも採用が進むと予測されている。
ファブレス企業が先鞭
GaNパワー半導体は、米国のファブレス(製造設備を持たない設計専業)企業がいち早く実用化し、市場を切り開いてきた。その代表格が米ナビタス・セミコンダクターだ。顧客に米デルや米アマゾン、中国レノボ、韓国サムスン電子、韓国LGエレクトロニクス、中国シャオミ、中国オッポといった大手企業を擁し、台湾TSMCの6インチラインに生産を委託している。同社によれば、データセンター向けは60件以上、OBCをはじめとする自動車向けは200件以上の収益パイプラインを有しており、前者は2024年から、後者は25年後半から収益に貢献し始める見通し。これに備えて、23年にはTSMCへの生産委託キャパシティーを3倍に増やした。また、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体のファブレスである米GeneSiCを買収し、GaNとSiCのパワー半導体双方を提供できる体制を整えた。
高電圧の電力変換ICメーカーである米パワーインテグレーションズもGaN製品のラインアップを増やしている。スイッチICをはじめとする新製品のほとんどにGaNを採用しており、スマホ向けから需要が伸びている。25年にはGaNの収益が50%ほど増加する可能性があり、28年までにはGaNの収益が1億ドル程度になると見込む。加えて、現在の横型デバイスよりもさらに高耐圧化が実現できる縦型GaNパワーデバイスについて(図)、これを開発していた米オデッセイ・セミコンダクターの資産を買収し、ニューヨーク州イサカにあるクリーンルームを備えた1万平方フィートの施設などを取得した。3~5年以内にEV用インバーターなど…
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週刊エコノミスト
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