日本からテレビ用液晶パネル工場が消滅へ 中国勢の攻勢で供給過多に陥り 津村明宏
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国産化を進める中国メーカーの攻勢で、大型液晶パネルの需給バランスが悪化。シャープをはじめ大手メーカーの撤退が相次いでいる。
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シャープは、テレビ用など大型液晶パネルの製造子会社である堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市)の操業を2024年9月末までに停止すると発表した。中小型液晶パネルの生産は継続するものの、その生産拠点である亀山第2工場(三重県亀山市)および三重第3工場(三重県多気町)の生産能力も大幅に削減し、少量生産していた有機ELパネルも終息する。2期連続で大幅な営業赤字を計上し、全社業績の足を引っ張るかたちとなっているディスプレイデバイス事業の固定費を削減することで収益改善を図る。これにより、日本国内からテレビ用液晶パネルを製造する工場が消滅することとなった。
中国での販売が鈍化
SDPは、当時世界最大だった第10世代(G10)ガラス基板(2880×3130ミリメートル)を採用し、09年10月に操業を開始した。SDPの操業に合わせて、ガラス基板メーカーの米コーニングがガラス基板工場を併設したほか、凸版印刷(現TOPPANホールディングス)や大日本印刷のカラーフィルター事業を統合するなど、部材メーカーと一体となった拠点づくりを推進した。だが、液晶パネル市場の競争激化によって、14年以降の10年間で営業黒字を確保できたのは4回にとどまり(表)、純損失は過去10年間の累計で3000億円を超えるなど、収益を安定させることができなかった。
シャープ自身も「変化への対応が遅れた」と述べており、ディスプレイデバイス事業の再編が遅きに失した感は否めないが、SDPの歴史は親会社である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の戦略に振り回されてきた側面もある。鴻海はかつて、中国市場で液晶テレビが伸び盛りだった16年、主に中国市場でシャープ製液晶テレビを大量販売する「天虎(Sky Tiger)計画」を展開。当時は鴻海の傘下にあったSDPの生産能力をフル活用して大型液晶パネルを大量生産し、17年には中国市場でシェアを大きく伸ばすことに成功し、SDPも黒字転換を果たした。
だが、18年から中国テレビブランドの価格攻勢にあって、シャープ製液晶テレビの販売が鈍化すると、中国の液晶パネルメーカーがSDPよりさらに大きなG10.5(2940×3370ミリメ…
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週刊エコノミスト
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