➓「認知症」を歯科目線で考える 林裕之
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歯周病菌や咀嚼(顎運動)と関係することから、今回はこの認知症について私の体験を踏まえて解説しよう。
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70歳を前に心身のあちこちに不具合を生じることが多くなりました。物忘れもその一つで、仕事の予定や買い物などはスマホのリマインダーや付箋へのメモが欠かせません。時にはメモしたことすら忘れることがあります。すると、気になるのが認知症です。歯周病菌や咀嚼(そしゃく)(顎運動(がくうんどう))とも関係することから、今回はこの認知症について私の体験を踏まえて解説します。
認知症とは、脳の機能(記憶、認識、思考、判断力など)が持続的に障害され、日常や社会生活に支障をきたすようになった状態とされています。
主な認知症とその割合は「アルツハイマー型認知症67.6%」「脳血管性認知症19.5%」「レビー小体型認知症4.3%」「前頭側頭型認知症1.0%」です(2020年時点)。
アルツハイマー型認知症を発症するきっかけは、「アミロイドβ(ベータ)」や「タウたんぱく」が脳に異常にたまること。しかし、なぜそれらが脳にたまってしまうのかは、現段階でははっきりと解明されていません(アミロイドβやタウたんぱく説を否定する説もある)。
23年12月20日に新規アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が保険適用となりました。年間薬価は約298万円と高額です。適応対象は「軽度認知障害」と「軽度の認知症」(全体の約1割)と初期症状限定なのが難点です。
認知症が進行すると介護が避けられません。老老介護やダブル介護(子の養育と親の介護の同時進行)、ヤングケアラーなど家族にとっても肉体的、経済的な負担も大きく、介護離職による経済的損失は1年当たり約6500億円になると見込まれ、社会問題にもなっています。
この先は高齢者の多い期間が続きます。25年に予想される認知症患者数は約675万人、65歳以上の5.4人に1人の割合と想定されています(内閣府「高齢社会白書」2017〈平成29〉年度版)。
血液検査で分かるリスク
気になるのは、この5.4人のうちの1人に自分が含まれるかどうかです。7割近くを占めるアルツハイマー型認知症の発症リスクを調べる方法があると分かり、私が受けてみました。
APOE(アポイー)遺伝子検査
アミロイドβの蓄積にかかわっているとされているのが、APOE遺伝子でε(イプシロン)2、ε3、ε4の三つのタイプがあります。それぞれが二つ合わさって6通りの組み合わせパターンとなります。この組み合わせパターンを調べることで、発症リスクが分かるのです。遺伝子は生涯変わらないので、この検査は1度で済みます。あくまでもリスク判定なので、高リスクだから発症するというわけではありません。私のAPOE遺伝子の組み合わせは発症リスクの低いパターンでした。
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