教養・歴史 創刊100年特集~Archives

検証・戦後日米首脳会談 第3回 米艦船の検査できない事前協議制 元防衛庁長官・赤城宗徳(1991年1月22日)

週刊エコノミストは1991年1月~5月、戦後の日米首脳会談の裏側で何かあったのかを歴代の首相、外務大臣、官房長官などの証言を基に総点検した連載「検証・戦後日米首脳会談」を掲載しました。「エコノミスト創刊100年特集~Archives」でこれを再掲載します。※記事中の肩書、年齢等は全て当時のままです。

◇初の米大統領招聘にこだわり自滅した岸首相

「自衛隊はどうなんだ」と岸首相。反安保のデモが二重、三重に取り囲む中で、赤城防衛庁長官は決断を迫られた。だが、決して「出せ」とは言わない。「どうなんだ」。責任の重圧に耐えながら、赤城長官は言葉を探した。

語る人=元防衛庁長官・赤城宗徳/聞き手=本誌編集委員・鈴木健二

命取りの警職法騒動

── 岸さんは生前のインタビューで安保条約改定に取り組んだ理由について「国防問題に対する国民の関心を高めてもらう」ためだと言っています。昨年、自民党の小沢幹事長は国連平和協力法案を国会に提出した理由について、やはり「防衛に対する国民の関心を高めるためだ」と同じようなことを言っているので気になるのですが、岸さんの本当の狙いは何だったのですか。

赤城 岸さんの履歴は東大でも上杉慎吉のほうで、美濃部達吉ではない。どちからといえば国粋派だ。上杉博士から後継者として大学に残り、憲法講座を担当してくれといわれたほどだからね。

 いわば、日本の独立をはっきりさせようというのが安保改定の主な狙いだった。ところが、吉田茂さんは「俺が安保条約をつくったのは進駐軍を日本から帰させるためだ、いまさら安保条約の改正なんていうのは出過ぎているじゃないか」と難色を示し、初め2人の具合が悪かった。

 一面では吉田さんの言う通りだ。サンフランシスコ講和条約をもって単独平和をやった。居座った進駐軍を排除するために、吉田さんは安保条約をつくった。だけど岸さんとしては旧安保では日本は半独立だ。日本の主権をしっかりしたものにするには安保条約を改正する必要があると、こういう意味であれは始まったわけだ。

── なるほど。後に安保改定をめぐって混乱するのも党内対立が素地にあったのですね。ところでその前に岸さんは警職法改正案を出しますね。58年10月でした。同じころの記者会見で岸さんは「日本が自主的な防衛体制をとり、これを完全ならしめるため、日米安保を改正する」と安保改定を表明する。岸さんは「安保改定は相当の反…

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週刊エコノミスト

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