8月の記録的暴落の裏にある株式市場の「構造変化」 渡辺浩志
8月初めに記録的な暴落に見舞われた日本株。背景には、米国の景気後退懸念の高まりや日銀が金融引き締め姿勢を強めたことによる、円高の急進があった。
その後、米国の経済指標が底堅さを示したことや、日銀の内田真一副総裁が「市場が不安定な状況で利上げはしない」と明言したことで、株式市場は落ち着きを取り戻した。
だが、株式市場では今回の暴落の前から構造変化が始まっていた。海外投資家が主導する日本市場では、従来はドル建ての日経平均株価が米国株価にピタリと連動していた(図1)。国際分散投資を行う海外勢が、保有資産の構成比を整える「リバランス」を目的に、米国株の値動きに合わせて日本株を機械的に売買してきたためだ。
しかし4月末以降、日米株の値動きが乖離(かいり)し始めた。それは米国で弱い経済指標が続出し、市場参加者の間で利下げ期待が高まり始めた時期だ。一方、日本では円安が急進するなかで日銀が利上げを急ぐとの観測が浮上した。それまで円安の影響は「無視できる」と語っていた日銀総裁が、影響を「注視する」とし、方向転換した。
こうして日米の金融政策の方向性の違いが明確になると、それを境に日米の長期金利が逆行した(図2)。同時に株式のバリュエーションを表す株価収益率(PER)も米国は上昇、日本は低下と上下に割れた。日米株価の乖離は、日銀のタカ派化や円高リスクを嫌気した海外勢が投資配分を改め、日本株買いを弱め…
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週刊エコノミスト
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