日銀がまだ抱える「二つの宿題」 愛宕伸康
日本銀行がまだ手を付けていない夏休みの宿題が二つある。一つは「物価安定の目標」が実現しなかった時に、金融政策をどう運営するかの検討。もう一つは国債買い入れ減額の着地をどうするかの検討である。
7月に利上げを行った日銀は、経済・物価情勢が「展望リポート」の見通しに沿って推移すれば、引き続き利上げを行うと明言している。展望リポートとは日銀が四半期に1度公表する「経済・物価情勢の展望」のことで、7月のリポートでは2026年に向けて「物価安定の目標」(消費者物価前年比2%)が持続的に実現する見通しとなっている。
つまり、日銀は「物価安定の目標」の実現を前提に利上げを継続しようとしているのだが、果たして本当に消費者物価指数は2%の伸びで安定するだろうか。
物価は2%に届かない
図1は消費者物価指数(生鮮食品及びエネルギー除く)と、その内訳として「生鮮食品を除く食料」「公共サービス」「持ち家の帰属家賃」を、13年3月を100とする指数で示したものだ。図には前年比1%で上昇するラインと同2%で上昇するラインを記した。
22年以降急上昇した「生鮮食品を除く食料」は、足元で前年比2%のラインに沿って推移しているが、「公共サービス」や「持ち家の帰属家賃」は横ばいを維持している。日本の消費者物価はこうした動かない分野がアンカー(いかり)となっているのが特徴で、この構図が続く限り、全体の伸びはやがて2%よ…
残り506文字(全文1106文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める