円高で為替要因の収益上振れは止まる 斎藤太郎
ドル・円の為替レートは、日米金利差の拡大などを背景に、2021年ごろからほぼ一貫して円安・ドル高傾向が続いてきた。24年6月末から7月上旬にかけては1ドル=160円台まで円安が進行した。
しかし、その後は米国の消費者物価上昇率の鈍化、米共和党の大統領候補トランプ氏によるドル高是正宣言などから円高傾向となった。さらに7月末に日本銀行が政策金利を引き上げたこと、8月初めに公表された米国雇用統計の結果が事前予想を大きく下回り、米国の景気後退懸念が高まったことを受けて、1ドル=140円台まで急速に円高が進んだ。
日銀短観6月調査では、24年度の経常利益計画(全規模・全産業)は前年度比7.5%減で、事業計画の前提となっている24年度の想定為替レートは全規模・全産業で144円77銭となっている。
21年以降、実際の為替レートが想定レートより円安水準となっていたため、収益計画が上振れる傾向が続いてきた(図1)。
たとえば、23年度の想定為替レートは当初計画(23年3月時点)では131円72銭だったが、実際の為替レートは144円60銭(23年度平均)と10円以上の円安となり、23年度の経常利益(全規模・全産業)は当初計画の前年度比2.6%減から同12.4%まで上振れた。
為替効果はマイナスへ
足元の為替レートは想定レートとほぼ同水準だが、想定レートよりも円高となった場合には、企業収益の下振れにつな…
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週刊エコノミスト
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