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教養・歴史 書評

バネはまるで寡黙なボディーガード 世界を支える小さな発明 高部知子

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 8月8日に宮崎県日南市で最大震度6弱を観測し、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて発表されたが、皆さんはどのような準備と心構えをされただろうか。私はいざという時に自分だけの買い占めとならぬよう、普段からある程度の備蓄はしている。

 しかし、フッと思った。どこに逃げればよいのだろう。家は持ちこたえるのだろうか。小学生のころ、半年に1度は避難訓練があり、地震が来たら机の下に隠れるようクラスみんなで練習した覚えがある。しかし、木の板に鉄パイプを溶接しただけの机で本当に体は守られるのだろうか。今思い返すと何とも心もとない。

 そんな地震大国に暮らす我々の知識として興味深い本を見つけた。『ナットとボルト 世界を変えた7つの小さな発明』(ロマ・アグラワル著、牧尾晴喜訳、草思社、2860円)。著者は有名建築物の設計に関わってきた構造エンジニアで、本書は「釘(くぎ)、車輪、バネ、磁石、レンズ、ひも、ポンプ」の七つの発明が人類に与えた影響をテーマにしている。確かにどれ一つとっても、なければ困るものばかりだ。

 例えば、地震に関連する免振技術については、本書の「バネ」の章で詳しく説明されている。そもそもバネは「力とそれを蓄える技術」と定義され、人類にとって初めてエネルギーを「蓄え」、それを「必要な時に」元の労力の何倍にもして取り出すことのできる道具であり、その原型が「弓」や「銃」であるという本書の説明は非常に分かりやすく、イメージしやすかった。

 音も同様で、音は液体や固体を振動させるため、人の頭の中までも震わせる。しかし、素材が異なると振動はエネルギーを失うため、例えば机の脚の下に厚めの紙コースターを挟み込むだけで振動伝達は軽減されるという。つまり「硬いものの間に柔らかいものを挟み込む」と振動が遮断される、この時使われる「柔らかいもの」がバネというわけだ。

 この性質を利用したのが…

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