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週刊エコノミスト Online 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

企画アイデアをよく思いついても提案できない/221

大森荘蔵(1921~1997年)。日本の哲学者。論理学の哲学をはじめ独自の哲学体系を確立した。著書に『言語・知覚・世界』などがある。(イラスト:いご昭二)
大森荘蔵(1921~1997年)。日本の哲学者。論理学の哲学をはじめ独自の哲学体系を確立した。著書に『言語・知覚・世界』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 企画のアイデアはよく思いつくのに、それを提案するには至りません よく企画のアイデアが思い浮かぶのですが、忙しさにかまけ、提案の形まで持っていくことができません。そのせいでかなり損しているような気がします。どうすればいいでしょうか?(事務職・50代女性)

A 言語化して初めて思考は形成される。普段は知覚の中で籠もっているだけです

 これはとてもよくわかります。私もふとした瞬間や移動時間などにいろいろなアイデアが思い浮かぶのですが、すぐ忘れてしまいます。メモを取ることもあるのですが、あまり効果はありません。実はこれは思考とは何かという根源的な問題に関係しています。そこで今回は、日本の哲学者、大森荘蔵の思考に関する考察を参考にしたいと思います。

 大森によると、普段から私たちはずっと思考をしているといいます。朝起きてから夜寝るまで一日中ぶっ通しで思考しているのです。その中には、ふと頭をかすめるさまざまな「思い」も含まれます。ただしその場合、思考は知覚の中に籠もっているといいます。

 つまり、一瞬垣間見たようなものは、普段は知覚の中に籠もっているけれども、それについて詳しく尋ねられたり、自分で思い出せば、思考となり言語化できるということです。実はこれこそ本来の思考のあり方にほかなりません。

アイデアは言葉で残す

 大森はここで「表現の誤り」という思考に関する誤解を指摘しています。どうも私たちは、あたかも思考する前に何か言葉になっていない思考のようなものがあって、それを言語化しているかのように思いがちなのです。

 ところが実際には、言語化する以前に思考などないというわけです。だから過去に起こったこ…

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