教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

米中対立の世界をどう捉えるべきか/222

ニーアル・ファーガソン(1964年~)。スコットランド出身の歴史学者。専門は経済史。ジャーナリストとしての顔も持ち、メディアでも積極的に発言。著書に『文明』などがある。(イラスト:いご昭二)
ニーアル・ファーガソン(1964年~)。スコットランド出身の歴史学者。専門は経済史。ジャーナリストとしての顔も持ち、メディアでも積極的に発言。著書に『文明』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 米中対立の今の世界をどう捉えるべきか? ロシアとウクライナの戦争が長引く中、2大大国といっていい米中が対立し、今世界は混沌(こんとん)としている感が否めません。いったい世界をどのように捉えればいいのでしょうか?(サービス業・40代女性)

A 国家の繁栄決める6指標の実現度から、新冷戦時代を実感できるのでは

 米ソの対立を経て、アメリカが独り勝ちしたかと思えば、あっという間に中国が台頭してきて、今や米中がしのぎを削っているのは間違いないでしょう。ただ、アメリカも国内が分断し、中国も成長に陰りが見え始めているという点では、決して2強時代ともいえないような気がします。

 さて、今後世界はどうなっていくのか? そこで参考にしたいのが、メディアでも積極的に発言をしているアメリカの歴史学者ニーアル・ファーガソンの思想です。ファーガソンは、なぜ西洋だけが覇権を獲得することができたのか分析する中で、彼が「繁栄のための六つのキラー・アプリ」と呼ぶ指標を提起しています。

 つまり、①経済競争、②科学革新、③財産・土地所有、④現代医学、⑤消費社会、⑥勤勉性・労働倫理の六つです。これらすべての要素が備わって初めて、国家は繁栄するというわけです。いずれも納得のいく要素だと思います。

歴史は繰り返す

 もちろん、アメリカの繁栄はこれらすべてを備えていた点にあったということでしょう。そして中国の繁栄もまた、こうした要素のダウンロードに起因しているといいます。もっとも、中国の場合は、法と規範を欲しないなどキラー・アプリを取捨選択してダウンロードしようとする点に問題があるようです。実はそこに中国の弱点が潜んでいます。

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