大阪メトロへの過大な負荷と地震時の避難計画の“不安”/7 木下功
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会場となる夢洲の地盤とアクセスは、今年1月に地震が起きた能登半島以上に悪いことを肝に銘じるべきではないか。
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工期を間に合わせることも、コストを抑えることも重要な課題だが、来場者の安全を確保するということが開催の最低条件ではないか。来年4月13日に開幕する2025年大阪・関西万博のことだ。万博協会が7月に公表した「来場者輸送具体方針」第4版と、9月公表の「防災実施計画」が来場者の安全確保の要となるが、現時点では会場である夢洲(ゆめしま)の悪条件を克服したとは言い難い。なかでも大阪メトロ中央線への過大な負荷と地震時の避難計画に対する懸念が残る。
夢洲は大阪湾に埋め立てられた人工島であり、恒常的に地盤沈下し、地震時には液状化の可能性が指摘されている。主なアクセスルートは同じ人工島の舞洲とつなぐ夢舞大橋と、咲洲に抜けて大阪メトロ中央線(延伸中)も通る夢咲トンネルの二つ。万博協会は、約半年間の開催期間の来場者総数を2820万人、ピーク時の1日来場者数を22万7000人と想定している。夢洲という会場が軟弱地盤とアクセス不足で、輸送するにも避難するにも困難が伴う人工島と分かった上で、子どもたちや海外の要人を招き、膨大な来場者を呼び込む以上、万全な安全対策が必須だ。今回は来場者輸送具体方針の課題を中心に検証する。
2~3分ごとに電車が発車
「来場者輸送具体方針」第4版をみると、万博会場へのアクセスで最も輸送力の高いのは大阪メトロ中央線だ。ピーク時には1日12万9000人(56.8%)を運ぶ計画で、主要駅から会場へ直行する駅シャトルバス・空港直行バス・中長距離直行バスで3万人(13.2%)、自家用車・団体バス・タクシーで6万8000人(30%)をカバーする。
昨年11月公表の第3版では大阪メトロ中央線は12万4000人(55%)で、駅シャトルバスなどで3万5000人(15%)、自家用車などで6万8000人(30%)という分担率で、第4版になって大阪メトロ中央線の分担率が増加した。駅シャトルバスなどの輸送力の限界に達する人数を第3版では16万人と推定していたが、第4版では13.6万人と精緻化。より現実的な数字に近づいたと考えられる。
しかし、第3版、第4版ともに「日来場者数が、おおむね20万人を超えたあたりから、輸送における鉄道の割合が加速度的に増加するため、それに備えた対策が必要となる」という指摘は変わらない。鉄道とは大阪メトロ中央線のことであり、第3版で乗客の加速度的増加への対策が求められていたにもかかわらず、第4版で状況は悪化している。
対策としては、両版ともに来場者のピーク時に運行本数を1時間に16本から24本へと増加することを挙げている。2~3分ごとに電車が発車するというペースだが、「大阪メトロ中央線の混雑率(乗車定員に対する乗車…
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週刊エコノミスト
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