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教養・歴史 書評

モラトリアム終了期の「みずみずしい喪失感」 美村里江

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 ラーメン業界を背景に鋭い風刺も挟まれる漫画『らーめん再遊記』。楽しみにしていた最新11巻に、〈既に夢を諦めたのに「いくつになっても夢を追い続ける永遠の少年」を気取ってプライドを守る中年〉という表現があり、対極ともいえる本書を思い出した。『パーティーが終わって、中年が始まる』(pha著、幻冬舎、1540円)

 40代半ばに差し掛かった自分のプレパラートを顕微鏡にセット。倍率を上げ下げして「今の自分」をじっくり観察しつつ、合わせ鏡で過去や未来も見つめていく一冊である。面白さを原動力にシェアハウスやイベントを主催してきた著者は、若かりし日の身軽さを基準点に中年期のあらゆる質感、重量、速度を着実に捉えていく。

 若い頃は透明性が高く存在感も薄いが、反して中年は重ねてきた人生の分どうしても存在が濃くなってしまうので「いやぁ、自分ダメ人間なんで」などの軽口や、ヨレヨレの古着を「なんだか不味(まず)いぞ」と感じる説には特に共感した。本人にとっては同じ言動でも、時間が意味を変えていくのはどうしても止められない。

 誰しも自身のモラトリアム終了を感じる季節を迎えると思うが、ありのままの中年観測記たる本書は現実と自分を擦り合わせる下敷きにもなりそうだ。

 勢いで書けた頃と違い、40歳を過ぎて何を書けばいいかわからなくなったという著者。過ぎ去った若さについて50代以降に書くと枯れきった遠い目線になるので、今ならではの「みずみずしい喪失感」をそのまま書くのはどうか、と提案した担当編集さんに感謝したい。

 自身に置き換えてみると、役者は「存在感が濃くなる」ことが優位に働く職業の一つである。後期高齢者まで色濃く続けたいものだ。

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「脳をハックする」ような書籍の人気が続き私も面白く読んでいるが、ヒョロリとした表紙のイラストでつい手に取った『すぐやる脳』 (菅原道仁著、サンマーク出版、1540円)。「…

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