トランプ氏の権威主義的スタイルか ハリス氏の聞く力を持つ民主的スタイルか 多田博子
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「選挙は川上から。握った手の数だけしか票は出ない」。かつての宰相、田中角栄の言葉は、米大統領の両候補者が見事に体現している。民主党のハリス・ウォルズ陣営がバスツアーで都市部から農村部まで全米各地でローラー作戦を仕掛ける一方、共和党のトランプ・バンス陣営は激戦州を中心に大小の集会を精力的に開催している。ハリス陣営が白人、ヒスパニック、黒人と幅広い層に訴える一方、トランプ陣営は自身の政策に反対する層であるLGBTQ(性的少数者)を学校現場で支援する母親たちのNPO法人年次総会にまで顔を出す。
4年に1度、オリンピックイヤーに開催される米大統領選では、普段は脚光が当たらない米国の片田舎の小さな集会にまで正副大統領候補が出向く。角栄は、川上で演説をすれば、こんな田舎にまで来てくれたと感激し、高齢者が家族や親戚一同に話して広がるとしてまず地方を固め、繁華街は後に回す戦略だったとされる。バイデン大統領が選挙戦を退いた途端に民主党が勢いをつけ、大統領選は互角、激戦州の投票行動が雌雄を決するとされるなか、両陣営の選挙戦は角栄ばりのどぶ板合戦だ。
大統領選は、盛り上がりに欠けていた「バイデン・トランプ対決」から一転、リベラル、保守、性別、世代対決の枠を超え、楽観的で協調と多様性を志向するハリス氏に託すか、怒りを原動力に米国1強を目指すトランプ氏に託すかの選択となっている。
権威主義か、聞く力か
筆者が注目するのは両者のリーダーシップスタイルの違いである。トランプ氏はよく指摘されているように権威主義的リーダーシップと思われる。米紙ワシントン・ポストのキャロル・レオニグ記者の著書『私だけが問題を解決で…
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