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教養・歴史 歯科技工士だから知っている「本当の歯」の話

⑮「白い歯信仰」を捨てよう 林裕之

 歯の色にコンプレックスを感じる必要はない。各人固有の身体的特徴の一つでしかないのです。

>>連載〈歯科技工士だから知っている「本当の歯」の話〉はこちら

 歯並びと同じように間違った認識でコンプレックスを抱きやすいのが「歯の色」です。審美歯科評論家を名乗る歯科医はテレビ番組の中で「黄色い歯より白い歯のほうがいい」と真顔で言っていました。今どきこんなことを言う歯科医がいるのかと耳を疑いました。たちの悪いデンタルハラスメントです。

 歯科医ですらこんな調子ですから、一般の人が根拠のない「白い歯信仰」を持ってしまうのも仕方ないのかもしれません。

 しかし、これは全く間違った認識です。歯の色に優劣はありません。白いほうが健康ということもありません。白い歯もあれば、茶色い歯、黄色い歯など十人十色です。目や肌、髪の色が違うように歯の色も各人固有の身体的特徴(個性)の一つでしかないのです。

 コーヒーや赤ワイン、タバコのヤニなどの着色汚れが歯磨きでとり切れない場合は歯科医院で落とせます。すると、その人本来の歯の色になります。写真は前歯の被せ物などの際に隣の歯や噛(か)み合う歯と色を合わせるための色見本です。これだけでも16色ありますが、私の歯のようにさらに濃い色の歯など色見本にはない歯も多数存在します。

 蔓延(まんえん)する白い歯信仰が原因で生じたコンプレックスを解消するために、審美歯科や美容歯科を受診する人も増えています。歯の色を変える方法は主に2種類で、ホワイトニング(漂白)と、白い人工の歯に置き換える補綴法(ほてつほう)です。

高額でリスク伴う補綴法

 ホワイトニングは自分の歯を漂白するので、噛み合わせなど機能の変化は伴いません。問題なのが自分の歯を削って人工の白い歯に置き換える補綴法です。自分の歯の表面、または全周を削ってその部分を人工の歯に置き換えるのです。こちらは噛み合うポイントなどの変化を伴います。削る歯の本数が多いほど噛み合わせが変わるリスクは大きくなります。

 歯列矯正で短期間に噛み合わせが変化し、それが原因で、虫歯や歯周病、口が開かない、顎(あご)が痛む、首や肩のコリ、不眠などの不快症状が起こる実例は前号までに説明した通りです。これと同じことが白い人工の歯に変えたことで起こる場合があるのです。

 人工の歯に置き換えると、それまでの咀嚼(そしゃく)運動に影響を与えます。この変化に…

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週刊エコノミスト

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