新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

週刊エコノミスト Online

非燃焼式ニコチン製品について265本の論文を発表 たばこハームリダクション推進へ複数の選択肢を-[Economist View]

東京都内で9月下旬に開かれた「第59回日本アルコール・アディクション医学会学術総会」にて、BAT(British American Tobacco、本社・英国)でリサーチ&サイエンスディレクターを務めるジェームズ・マーフィー氏が、たばこハームリダクションについて発表した。日本では加熱式たばこの増税が検討されているなか、海外での政策の事例や同社の加熱式たばこにおける試験結果などをマーフィー氏に聞いた。

British American Tobacco リサーチ&サイエンス ディレクター ジェームズ・マーフィー氏
British American Tobacco リサーチ&サイエンス ディレクター ジェームズ・マーフィー氏

多くの研究結果から見えてきたこと

 たばこハームリダクションとは、燃焼式たばこのリスクを認識し喫煙に伴う健康への影響を最小限に抑えることを目的とした公衆衛生政策のことだ。BATの研究開発部門のトップであるマーフィー氏は、同社で製品の安全性の担保や、たばこハームリダクションを進めていく役割を果たしている。マーフィー氏によると、BATは、紙巻たばこ、加熱式たばこ、オーラルたばこの3種について、何が排出されているか、何が体内に取り込まれているか、どのようなリスクがあるのかを調べ、265本の論文を発表しているという。

 BATを含む各組織の研究の結果、加熱式たばこは紙巻たばこに比べて排出する有害性物質を90%以上低減し、加熱式たばこに切り替えた喫煙者では体内に取り込まれる有害物質の量も有意に低下することがわかった。

 さらにマーフィー氏は「これらの結果から加熱式たばこに切り替えることで、70万人以上の死亡を回避できる可能性があると推測する一方、今後の課題には、どうすれば紙巻たばこから加熱式たばこに変えてくれるか、たばこの味が果たす役割は何かなどがある。本学会の中でも、ニコチンを紙巻たばこから摂取する場合には相当な悪影響があるが、より低リスクで摂取できる製品があることを考えなければならないなどの議論があった」と語った。

 日本の喫煙環境についてマーフィー氏に聞くと「室内での喫煙については世界でも許されていない。だが、屋外での喫煙までは強く制限をかけていない。その点日本は、屋外喫煙にも厳しい。これは、日本人が清潔感や周囲の人への配慮を重要視しているからで、この点からも、加熱式たばこは受け入れられやすいだろうと考えている。実際、ここ数年の日本におけるたばこの消費本数は横ばいだが、紙巻たばこは減り、加熱式たばこが増えている。切り替えが進んでいる結果だろう」と述べた。

紙巻たばこからの移行へ諸外国のとった政策は

 そして、英国では加熱式たばこの税は紙巻たばこの約4分の1だが、日本では同じにする動きがあることについてマーフィー氏は「たばこ税について研究しているわけではないが、グローバルな視点でみると、加熱式たばこに移行する際の障害があってはならない。例えば、地球温暖化対策として、ガソリン車から電気自動車へ移行を推進するなら、政府の何らかの支援が必要だろう。英国では政府が紙巻たばこからベイプ製品(電子たばこ)への切り替えを奨励し、スターターキットを100万人に無料配布している。

 また、スウェーデンでは紙巻たばこの代替製品としてスヌースとよばれる無煙たばこへの移行を推進したことで、喫煙率は過去15年間で約3分の1となり、2022年には喫煙率が5.6%とEU内最低水準となっている。どちらも素晴らしい政策だと思う」と述べ、つづけて「結局、社会として何を選ぶかということだ。私たちは、選択肢として日本の方々に、紙巻たばこよりリスクの少ない非燃焼式の加熱式たばこ、ベイプ、オーラルたばこの3種を提供したいと考えている」と語った。

学会発表の様子
学会発表の様子

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

11月26日号

データセンター、半導体、脱炭素 電力インフラ大投資18 ルポ “データセンター銀座”千葉・印西 「発熱し続ける巨大な箱」林立■中西拓司21 インタビュー 江崎浩 東京大学大学院情報理工学系研究科教授、日本データセンター協会副理事長 データセンターの電源確保「北海道、九州への分散のため地産地消の再エネ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事