美的集団 家電・空調機器で中国をリード 富岡浩司
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Midea Group 産業ロボットでも存在感/128
美的集団は中国の家電最大手だ。白物家電、空調機器、ロボットなどを生産する。
創業は1968年。現在の広東省仏山市に含まれる村で26歳の青年、何享健氏が村民23人と設立したプラスチックボトルのふたを生産する事業所だった。転機となったのは何氏が30代後半だった80年、改革開放の波に乗って扇風機の製造を始めたことだ。翌年、「美的」の商標を登録し、社名を「順徳県美的風扇廠」に改称した。2回目の転機は85年に空調機器工場を設け、その後の世界進出につなげたことだろう。同社は93年、深圳証券取引所に上場した。
2007年には初の海外生産拠点をベトナムに開設した。何氏は12年に引退し、方洪波氏が最高経営責任者(CEO)を引き継いだ。方氏は創業者と血縁関係がない。中国やアジアの大手企業には珍しいといえるだろう。
東芝の事業買収で高級化
方氏は一時の勢いを失っていた家電事業を再編しただけでなく、16年に冷蔵庫、エアコン、洗濯機などのメーカー、東芝ライフスタイルを買収したことで高級ブランド化への道筋をつけた。17年にはドイツのロボット大手クーカとイスラエル産業用制御機器大手のサーボトロニクス・モーション・コントロールを買収。クーカはスイスのABB、ファナック、安川電機と並んで世界4大ロボットメーカーの一角を占める。
方氏は中国の家電メーカーだった同社の事業を産業ロボットなどに広げ、世界展開を実現した。その結果、今年6月末現在の海外売上高比率は41.9%まで上昇した。200カ国・地域で営業し、子会社400社超、研究開発センター33カ所、主要生産拠点43カ所、従業員数19万人超を誇る。
24年1~6月期売上高の事業部門別内訳は、空調機器46.7%、白物家電34.6%、ロボット・自動化システム8.4%だった。主力事業の空調機器の需要は、中国の景気悪化と住宅販売の低迷が水を差しているが、地方の中小都市や農村部では普及率がまだ低く、中長期的な潜在需要が大きい。
香港市場で大型調達
また、地球温暖化による海外の需要増も見逃せない。例えば、夏の気温がそれほど高くならなかった北米や欧州の高緯度帯では、歴史的な酷暑が続いて冷房に対する意識が変わり始めている。家庭用のみならず、オフィスやホテルなど商業用の市場が拡大しており、性能と価格面で優れた同社製品に追い風だ。
売上高構成比2位の白物家電は中国市場での存在感が大きい。同社が中国の市場調査会社、北京奥維雲網大数拠科技(AVC)のデータとして発表した24年1~6月期の中国売上高シェア(オンライン販売を除…
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週刊エコノミスト
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