ブラックロック 世界最大規模の資産運用会社 宮川淳子
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BlackRock 100カ国以上に顧客/129
米国ブラックロック社は、2024年6月末時点で10.6兆ドル(約1484兆円)の運用資産残高を持つ世界最大規模、かつ多角化した資産運用会社だ。100カ国以上に顧客を持つ。
同社は、オルタナティブ投資で有名なブラックストーン・グループの債券運用部門として、現最高経営責任者(CEO)のローレンス・フィンク氏を含めた8人のパートナーによって、1988年に設立された。ブラックロック社は、業務プロセス全体を統合するテクノロジー・プラットフォームの「アラディン」を自社開発し、トレーディングから複雑なリスクマネジメントやポートフォリオ分析にも横断的に取り組むことで成長してきた。94年にPNCバンクに一旦売却されたが、99年には現経営陣らが新規株式公開。同年末の運用資産残高は1650億ドル(約23.1兆円)だった。
“iシェアーズ”で有名
00年以降のブラックロックの事業拡大の背景には、米メリルリンチや英バークレイズ系列の資産運用会社との経営統合効果もあるが、独自のブランド商品「iシェアーズ(iShares)ETF」の成功がある。
24年3月付の「iシェアーズ・インベスター・プログレスリポート」によると、iシェアーズETFは、いつでも売買可能で、運用コストが低く、株式、債券、コモディティー、リートなど幅広い資産クラスに分散投資ができる商品特性を持ち、世界の証券取引所で1400本以上を上場しているとしている。日本でも上場iシェアーズは38本ある。昨年末のiシェアーズの世界全体の資産残高は、3.5兆ドル(約490兆円)と、現在の全社運用資産の約3分の1を占め、99年時点の運用資産1650億ドルの20倍以上に拡大している。
同社のもう一つの強みは、自社開発の運用プラットフォーム「アラディン」で、「ウォール街のアマゾン・ドット・コム」と称されるほどの優秀なプラットフォームとされ、複雑な情報やリスクを確実にモニターするシステムのため、資産運用会社や機関投資家など13万以上の顧客を持つとされる。23年のアラディンの売上高は15億ドル(約2100億円)。同社はこのアラディンを新たな収益の柱に育てることを目指しており、買収・合併戦略を強化している。
19年にオルタナティブ投資に特化したITソリューションの仏eフロント社を買収し、アラディンと一体化した運用管理を始めた。今年に入ってからは、プライベート市場に強い英調査会社のプレキンを買収することを公表。プルデンシャル・ファイナンシャルの調査によると、世界のプライベート市場は、22年には12兆ドル(約…
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週刊エコノミスト
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