GDP3位も経済停滞続くドイツ 中尾将人
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名目GDP(国内総生産)で日本を上回ったドイツ。だが、ドイツ経済が万全な成長を遂げているというわけではない。
公共投資不足、なお続く東西格差
国際通貨基金(IMF)が公表した2024年4月版の世界経済見通しによると、23年の日本の名目GDPは4兆2000億ドル、ドイツの名目GDPは4兆4000億ドルとなり、ドイツのGDPは米国、中国に次ぐ第3位、日本は第4位となった(図)。
この順位の変動について、日本は円安・ドル高が進んでいるため、日本のGDPはドル建てにすると小さく評価されることが影響しているという指摘もあるが、米国や中国と比べると日本がほとんど経済成長していないことも事実である。しかし、3位となったドイツも日本と同様に長期にわたって成長の停滞が続いており、十分な成長を遂げたわけではない。
ユーロ危機後に回復も
1990年の東西ドイツ統一後、ドイツ経済は深刻な不況に直面した。不況は「欧州の病人」と皮肉られるほどであり、統一後の東ドイツ経済の競争力低下による景気悪化と、西ドイツ企業の過剰設備投資の反動によるものであった。ドイツは抜本的な改革を迫られたが、サブプライム証券投資の活況を背景とする世界的な景気拡大に伴う輸出拡大により、特に自動車や機械産業が好調となり、経済が回復していった。しかし、リーマン・ショックを契機とする世界金融危機の影響を受け、再び不況に陥った。
その後、ユーロ危機が発生し、ユーロ圏全体が大きく混乱することとなったが、ドイツ経済はこれを契機に再び回復することとなった。ギリシャなどの危機国の景気悪化に対応するために金融緩和を進めたこともあり、ユーロは他の主要通貨に対して下落した。
独自の通貨を採用する国であれば、輸出増加により経常収支黒字が拡大したとしても、長期的には為替レートが通貨高に変動し、経常収支が調整される。しかし、ユーロ圏経済においては、ドイツだけでなく他のユーロ圏国家の経済状況も為替レートに影響を与えるため、結果としてドイツはユーロ安の恩恵を受け続け、ユーロ圏内外での競争力が高まり、輸出が促進された。そして、ユーロ危機後はドイツの独り勝ちと呼ばれるまでになった。
しばらく独り勝ちの状況が続いたが、ロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、再び景気が悪化することになる。エネルギー価格が高騰し、自動車産業などの製造業の生産量が減少した。インフレによる消費の落ち込みや、インフレ対策としての金利引き上げの影響を受けた住宅投資の減少も景気の低迷をもたらした。IMFによれば、新型コロナウイルスの世界的大流行後の経済回復過程で、製造品からサービスへと需要が移ったことも、製造業に重点を置くドイツに悪影響を与えたとされる。
ドイツの問題として、生産性向上が必要との指摘がある。労働生産性の水準自体はEU(欧州連合)平均の約120%となっているが、その成長率は鈍化している。
厳しい財政規律ルール
国際経営開発研究所による世界競争力ランキングでは、14年は6位だったのに対して、24年は24位となっており、高齢化や資本ストックの老朽化などが影響している。民間投資に関しては、研究開発への支出は自動車産業に集中し、研究開発費に占める中小企業の割合はEU平均を下回っている。これにより、ドイツのイノベーション力が低下しており、将来の成長に不安を残している。
こうした問題を解決するためにはインフラや人的資本に対する公共投資が必要であるが、ドイツは「国家債務ブレーキ」という財政赤字をGDPの0.35%未満に抑える財政規律ルールによって、新規借り入れが制限されており…
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週刊エコノミスト
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