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教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

気候危機、原子力など価値観の対立する問題の判断、どうする?/227

ヘルマン・シュミッツ(1928~2021年)。ドイツの哲学者。身体と感情の現象学により新機軸を打ち立てた。著書に『哲学体系』などがある。(イラスト:いご昭二)
ヘルマン・シュミッツ(1928~2021年)。ドイツの哲学者。身体と感情の現象学により新機軸を打ち立てた。著書に『哲学体系』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 気候危機、原子力など価値観の対立する問題の判断、どうする? 気候危機、原子力との向き合い方、領土問題など、いずれも議論が錯綜(さくそう)しており、正解は何かわかりません。こうした価値観の対立する複雑な問題については、いったいどのように判断すればいいのでしょうか?(製薬会社勤務・50代女性)

A 世界はカオス的多様性に満ちている。それをそのまま理解してみては

 価値観が対立する問題というのは、往々にして全貌や真実が見えない問題なのだと思います。例に挙げられている気候危機や原子力の問題、また領土問題については、いずれも立場が分かれています。それは実態がわからないからなのでしょう。

 そこで参考にしたいのが、ドイツの哲学者ヘルマン・シュミッツの思想です。身体と感情の現象学を樹立したことで知られる人物です。シュミッツは、世界を身体的・情動的体験に根差した主観的事実として捉えます。すべては身体によって感知された主観的なものだということです。

 ただし、この場合の身体とは、狭い意味での知覚だけでなく、自分の存在全体を指します。その意味での身体的感知によって捉えたものが主観的事実としての世界です。この世界は主観とつくだけあって、主体と客体の区別がありません。そこにあるのはすべてが混在した多様な状況だけです。

あなたはどう感じますか

 シュミッツはその状況のことをカオス的多様性と呼んでいます。それぞれの多様な個体が存在する個体的多様性とは異なり、あくまで個体が区別される前の状態です。したがって、そこでは矛盾も成り立ちます。さまざまなものが混在しており、区別されていないからです。

 もし世界をそんなふうに…

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