積み上げた本と“共生”する猛者12人の読書哲学と保管術 藤原秀行・ロジビズ・オンライン編集長
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『積ん読の本』
著者 石井千湖さん(書評家)いしい・ちこ 1973年生まれ。早稲田大学卒業後、書店員を経て2004年から文芸を専門とするライターとして活動、書評などを手掛ける。著書に『文豪たちの友情』『名著のツボ 賢人たちが推す! 最強ブックガイド』など。
いつか手に取ろうと思いながら、つい新たな書籍に目が移り、部屋にまだ読んでいない本が積み上がっていく。本書は読書家の多くが悩んでいるであろう現象「積ん読」がなぜ起きるかに真正面から挑んでいる。
著者は書店勤務を経て文芸分野のライターとなった生粋の本好き。自身も日々、自宅の空きスペースが本で侵食されていくことに困惑していたという。
「書店に勤めていたころ、社員割引で本を安く買えたのがきっかけで大量に購入する癖が付きました。今の仕事を始めてからも本が増え続け、際限がなくなってしまいました。夜中に本を置いている棚の板が重みで割れて崩れたこともありました」
そこに旧知の編集者から、識者に積ん読の現場を見せてもらいながらインタビューする企画を提案された。
「非常に面白そうと思い、快諾しました。本との向き合い方、読書論などさまざまな切り口でお話ができそうでした。そして、そもそもの疑問として人はなぜ積ん読をするのかということを伺いたかったんです」
本書に登場する12人の卓越した読書ライフと積ん読ぶり、膨大な本の保管術はいずれも想像をはるかに超えていた。例えば、直木賞作家の小川哲氏は本が自宅マンションの部屋に収まりきらず、屋外用収納ボックスに入れてベランダでも保管。声優・作家の池澤春菜氏は玄関の収納棚が本でふさがり、来客用のスリッパを取り出せなくなった。
「エッセイストのしまおまほさんから、祖父の著名な作家・島尾敏雄の代表作『死の棘(とげ)』すらも積ん読していてまだ読めていないという話を聞くなど、驚くことばかりでした」
積ん読と聞くと乱雑な様子を…
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週刊エコノミスト
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