英国大学4割が赤字へ 授業料高騰とEU離脱で留学生激減 木村正人
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研究機関向けの情報を提供する「リサーチプロフェッショナル・ニュース」は10月31日付電子版で「英国の秋季財政支出計画は大学の財政危機をさらに悪化させる」と警鐘を鳴らした。
英国のリーブス財務相は9月の労働党大会で「世界をリードする大学、クリエーティブ産業、ライフサイエンス、ハイテク企業、プロフェッショナルサービス。英国中で計り知れない可能性を感じる」と力説した。
しかし、秋季財政演説でリーブス氏は「大学」には一言も触れなかった。雇用者が負担する国民保険料は15%に引き上げられ、「すでに財政難に陥っている高等教育機関のコストを増大させる税制措置に大学側は深い懸念を抱いている」(同ニュース)という。
教員年金制度の雇用者負担も30%近くまで上昇し、教育関連のコストは持続不可能なレベルに膨れ上がっている。国民保険料の負担増は国民の懐具合を悪化させるのは必至で、英国各地の大学でコースや学科の閉鎖が相次ぐ。
英科学誌『ネイチャー』(9月26日付)も「危機に瀕(ひん)する英国の大学」との特集記事で「約290の高等機関のうち70が組織再編や人員削減案を発表」と指摘した。
スターマー英首相のアドバイザーは総選挙前の5月に作成した「6大危機」リストに刑務所の過密化、国民保健サービス(NHS)の資金不足、地方自治体の破綻などに加え、大学の経営破綻を並べた。
これらすべての危機は、5年間で累積24%に達したインフレによる資金不足を穴埋めできないことに起因している。英国の大学産業は31万5000人の雇用を生み出し、国内総生産(GDP)の8.6%を占める。英国では「素晴らしい都市をつくるには大学を建て…
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週刊エコノミスト
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