ノーベル経済学賞の研究手法に賛否 「国の繁栄」のデータに疑義も 岩田太郎
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2024年のノーベル経済学賞は米マサチューセッツ工科大(MIT)のダロン・アセモグル教授とサイモン・ジョンソン教授、米シカゴ大のジェームズ・ロビンソン教授の3人が受賞した。受賞した研究の前提や手法をめぐり、米経済論壇で活発な議論が繰り広げられている。
アセモグル氏らは受賞した02年の共同執筆論文で、「なぜ一部の国は豊かで大きく繁栄するのに対し、別の一部の国は極貧なのか」という根源的な疑問に対して、それぞれの国が樹立した政治・社会制度の違いから分析。「個々の国が繁栄に向けて歩む道筋は、旧宗主国がその国に確立した制度の構造によって異なり得る」との結論を導いた。
ロビンソン氏の教え子で、現在はカリフォルニア大学バークレー校で教鞭(きょうべん)を執るフレデリコ・フィナン教授は10月14日付の同校広報配信サイトのインタビューで、「従来、経済学では政治がどのように公共の富の分配のあり方を決定し、それが人々の生活水準にどう影響するかは、ほとんど関心を持たれてこなかった。しかし受賞者らは、これらが繁栄のカギであり、貧しい人たちの福祉に影響することを説得力のある方法で示した」と指摘した。
受賞研究は、米国南西部アリゾナ州とメキシコ国境に位置し、元来はひとつのコミュニティーであるノガレスの米国側が豊かで、メキシコ側が貧しい例などを挙げ、「大まかに言えば、民主主義がより繁栄をもたらす」(アセモグル氏)と論じている。
こうした見方について、米紙『ニューヨーク・タイムズ』は10月14日付の解説記事で、「一部のエコノミストたちは、研究がヨーロッパ中心の考え方を前提にしていると批判している」と伝えた。同記…
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週刊エコノミスト
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