中国でのEV不振で危機的な独自動車業界 VWは国内工場閉鎖も示唆 熊谷徹
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電気自動車(EV)の販売低迷や中国市場でのシェア減少により、ドイツ自動車業界が減益決算や過剰な生産能力などの困難に陥っている。
日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は9月4日付電子版で、「フォルクスワーゲン(VW)が経費削減策の強化を発表。VWの今年上半期の営業利益は、前年同期比で約11%減少。経営陣は、主力車『ゴルフ』などを生産する中核部門(コアグループ)の過剰生産能力を減らすために、国内の一部の工場の閉鎖や従業員解雇も視野に入れている」と報じた。
VWが過去に国内の工場を閉鎖したことはない。FAZは、「ドイツのVW社員は、事業所評議会(企業内組合)が1994年に経営側と結んだ雇用保証協定によって解雇から守られている。この協定は2029年まで続く予定だったが、今回経営側はこの合意を破棄した」と伝えた。経営陣は、「欧州での販売台数は、コロナ禍前の水準を回復していない。1~2カ所の国内工場が余分だ」と指摘したという。
リストラの焦点は、中核部門の営業利益率の低さだ。経済紙『ハンデルスブラット』は8月1日付電子版で、「今年上半期のコアグループの営業利益率は2.3%と低い水準にある」と指摘した。仏ルノーの8.1%、イタリア・フィアットを傘下に置くステランティスの7.8%よりも大幅に低い。経営陣は今回のリストラによって、営業利益率を2.3%から6.5%に引き上げることを目指している。
内燃車・中国依存が裏目
同紙は「従来VWは国内の低収益率を、中国からの利益で補うことができた。VWは中国市場シェアが減っていることから、中国からの収益で国内の低収益を補うことが難しくなった」…
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週刊エコノミスト
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