中国も“痛み”を伴う時代に 定年延長が決まり映画興行が振るわず高級飲食店が次々閉店 河津啓介
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高度成長の終わり、人口の減少など構造的な課題に直面する中国。人々の暮らしもその影響から逃れられなくなっている。
9月13日、一つのニュースが中国社会に大きな波紋を投じた。働く人の定年年齢を今後15年かけて3~5歳引き上げる政府方針が決まったのだ。現行は男性が60歳、女性は職位によって50歳か55歳。1950年代に定められてから一度も延長されてこなかった「不変の定年」がついに見直されることになった。
日本を上回るペースで進む少子高齢化に対応し、年金財政の破綻を免れるためには避けられない措置と言える。ただ、国民にとっては年金受給期間の短縮という「痛み」を強いられる改革だけにSNS(ネット交流サービス)には多数の反発が寄せられた。
中国の人口問題に詳しい米ウィスコンシン大の易富賢氏は、米政府系ラジオ局『ラジオ・フリー・アジア』への寄稿(9月13日電子版)で「見直しはあまりに遅く、高齢化危機への対応としては不十分だ」と指摘した。そのうえで決断が遅れた理由について、政治指導者の人口問題に対する認識の甘さに加え、抗議デモの発生のような政治リスクを恐れたことが考えられると分析した。
社会保障制度に詳しい復旦大の朱勤教授は香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』の記事(9月15日電子版)で「定年延長だけでは社会保障の財源不足を解消できない」と警鐘を鳴らし、国有企業の負担増など抜本的な年金改革が必要だと主張した。
映画、飲食の消費低迷
一方で、中国で根強い人気を誇る映画産業も社会の風向きの変化にあらがえなくなっているようだ。
中国経済メディア「財新」の記事(9月1日電子版)によると、今年…
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週刊エコノミスト
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