月面探査機SLIMが月の起源に迫るかんらん石を“発見”/201
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今年1月20日に月面着陸に成功した日本の小型無人探査機「SLIM(スリム)」のデータから驚くべき事実が分かった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は研究ミッションの一つに「月の進化の謎を解く」ことを挙げていたが、岩石に反射した光の波長をマルチバンド分光カメラ(MBC)で観測した結果、「ダルメシアン」と名付けられた岩石に鉱物の「かんらん石」が豊富に含まれることを会津大学と立命館大学などのチームが突き止めた。
マグネシウムや鉄を含むかんらん石は、地球や月などの固体惑星の地下を構成するマントルの主成分とされる。地球と同様に月でもマントルはその体積の大部分を占めるため、マントル由来岩石の組成が分かると月全体の構造が分かる。さらに、地球深部のマントル由来のかんらん石と化学組成を詳しく比較すれば、月の起源と進化が推定できる。
月の誕生を巡っては、約45億年前に巨大な天体が原始地球にぶつかり飛び散ってできたとする説がある(本連載の第24回を参照)。これは「ジャイアントインパクト説」と呼ばれており、この衝突によって地球のマントル物質が大量に宇宙空間に飛び散った後、引力で引き寄せられて月が作られたと考えられている。
分光カメラで分析した今回の試料の組成が、地球のマントル由来のかんらん石と同じであれば、地球に大きな天体が衝突して剥ぎ取られた物質によって月ができた説を支持することになる。
マントル由来の岩石に
一方、かんらん石の成分が地球の体積の8割を占めるマントル物質のものとまったく異なれば、宇宙からやってきた物質が引き寄せられて月ができたことになる。ちなみに、米国のアポロ計画が持ち帰った月の岩石にはかんらん石がなかったので、SLIMの「ピンポイント着陸」によって初めて長年待ち望んでいた貴重な試料が得られたのである。
月の表面には、隕石(いんせき)が衝突してクレーターが形成された時に、地下から出…
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週刊エコノミスト
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