日本の活火山/8 岩手山(岩手県) 初の噴火警戒レベル2/200
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気象庁は10月2日、活火山の岩手山(岩手県、標高2038メートル)の噴火警戒レベルを、それまでの1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げた。これによって入山規制を呼び掛ける「火口周辺警報」が八幡平市、滝沢市、雫石町などに出された。また岩手県は災害特別警戒本部を設置した。現行の噴火警戒レベルが2007年に導入されて以降、岩手山でレベル2になるのは初めてである。
9月26日に実施された地球観測衛星「だいち2号」のレーダー観測の結果を国土地理院が解析したところ、想定火口の一つである黒倉山の大地獄谷付近で数センチメートルほど山の膨張を示す地殻変動が観測された。おそらく、地表に近い部分が膨張しているとみられ、黒倉山付近での火山性地震も増減を繰り返しながら継続的に観測されている。
一般に火山の噴火前には、マグマだまりに近い深部の膨張が観測されるが、今回は地下の浅い所が膨らんでおり、地下水が熱で膨張して地面を押し上げた可能性がある。マグマが地表に噴き出す「マグマ噴火」とは異なり、マグマにより温められた地下水が水蒸気になって500倍以上に体積を増すと、「水蒸気噴火」が発生して爆発的に噴石や火山灰を飛散させる恐れがある。
ちなみに、14年に60人以上の犠牲者を出して戦後最悪の火山災害となった長野・岐阜県境にある御嶽山の噴火も、大量の噴石を飛散させる水蒸気噴火によるものだった(本連載の第68回を参照)。
活火山地域の「だいち2号」による観測結果は、15年に起きた箱根山の水蒸気噴火でも活用された。神奈川県箱根町の大涌谷で小規模な噴火が発生する直前に、立ち入り規制された大涌谷の半径100メートルの範囲で、約10センチの隆起が観測されていた。今回も同様に水蒸気噴火に移行する可能性が高いと考えられる。
「焼走り溶岩流」形成
今回のレベル2では、噴石の飛散区域を西岩手山(大地獄谷・黒…
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週刊エコノミスト
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