「自立自強」の科学技術企業を育てる「忍耐強い資本」に注目 神宮健
中国では研究開発から商品化まで長期間を要し、リスクも高い科学技術企業への投資ができる「忍耐強い資本」の強化が叫ばれている。国内では不動産不況から「新たな質の生産力」による経済発展モデルへの転換を迫られ、対外的には第2次トランプ政権でも米中技術摩擦が予想される中、技術面での「自立自強」が求められており、科学技術産業育成が急がれるためである。
忍耐強い資本には、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドやプライベートエクイティ(PE)ファンドがある。中国では従来、海外から資金募集する米ドル建てのファンドが多かったが、米中摩擦などを受けて縮小し、現在の主力は国内資本のファンドである。特に国有資本が増加しており、2023年に募集された人民元ファンドの出資金額(約1.6兆元=約32兆円、各種報道による)の約7割を占めている。
国策ファンド「国家集成電路産業投資基金」が半導体企業に投資して産業発展に一役買っていることはよく知られる。一方、地方政府が設立・出資する地方政府誘導ファンドも、金融機関・企業の資金を引き入れてVCファンドなどに投資。新エネルギー車の分野へ投資した合肥市の例が知られる。
しかし、地方政府誘導ファンドには、企業誘致、就業増などの経済振興の思惑があり、リスクとリターンで考えるVCファンドの投資姿勢とは一致しない。また、国有資産の価値の保持・増加の点から短期間でVCファンドの業績を評価するため、本来必要な小規模・早期段階の企業への投資ではなく、成熟期の企業に投資が行きがちであるとの弊害も指摘される。
保険・年金資金も活用
そうした中、「科学技術金融」が中国の目指す金融強国構築の5…
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週刊エコノミスト
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