「トランプ2.0をチャンスに」 中国で対外開放・市場自由化の提言 河津啓介
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トランプ次期政権の誕生に世界が身構える中、最大のライバルである中国の論壇でもさまざまな議論が交わされている。「対中関税60%」を公約とし、対中強硬派を要職に任命するトランプ氏への警戒心は強いが、「危機を好機に転じられる」との受け止めも少なくないようだ。
中国人民大学重陽金融研究院の王文院長は評論サイト「観察者網」への寄稿(11月25日)で「国内の論調には『トランプ恐怖症』が見られるが、そのために自らの発展の歩みを乱されてはならない」と指摘。そのうえで「1期目のトランプ政権が中国の科学技術のイノベーションを促したように、『トランプ2.0』を再び改革を深化させるチャンスにすべきだ」と主張した。
関税引き上げや科学技術の封じ込めなどが予想されるトランプ次期政権の対中政策について、王氏は「1期目と変わらず新味がない。中国はそれに対処する経験や事前の対策を蓄積してきた」と主張。具体例として、中国の貿易総額に占める米国の割合が低下し、対米依存からの脱却が進んでいる点に言及。さらにグローバルサウスと呼ばれる新興・途上国との連携強化によって「トランプショック」を緩和できるとの見方を示した。
今後の米中対立の行方について、王氏は「どちらかを打ち倒すのではなく、自国をいかに発展させるかという内向きの競争になるだろう。一撃で決着がつくようなボクシングではなく、ゴルフやマラソンのような展開だ」と分析した。
その意味では、習近平指導部にとって、停滞する経済を立て直すことが、トランプ氏の動向以上に、米国との長期戦を勝ち抜く鍵になるとみられる。
対日ビザ免除も布石か
また、中国出身の政治学者である米クリスト…
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週刊エコノミスト
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