EUと南米が自由貿易で原則合意 トランプ2.0へのけん制球 熊谷徹
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欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会は12月6日、約25年に及ぶ交渉の末、南米南部共同市場(メルコスル)の大半の加盟国との間で、自由貿易圏を設立する政治的合意に達したと発表した。
保守系独紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は12月7日付紙面で「EUとブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチンは自由貿易圏を形成し、輸出入品目の91~92%について関税を撤廃する。約7億5000万人の人口を持つ世界最大の自由貿易圏が誕生する」と報じた。
FAZによると、合意で最も大きな利益を得るのはものづくり大国ドイツだ。ドイツとメルコスル加盟国の貿易額は240億ユーロ(3兆8400億円)。ドイツの輸出品の85%は工業製品だ。南米諸国は、関税率が高い。自動車の関税率は35%、自動車部品には14~18%、機械には14~20%の関税がかけられる。高い関税率のため、2023年にドイツからブラジルとアルゼンチンに輸出されたドイツ車は2万700台にとどまった。自由貿易圏が生まれれば、ドイツ企業は毎年4億~5億ユーロの関税を節約できる。
ドイツ産業界は、自動車や化学製品、機械類の輸出量増を期待する。ドイツのショルツ政権は、フォンデアライエン欧州委員長のメルコスルとの合意に向けた努力を積極的に後押しした。現在メルコスルの最大の貿易相手は中国で、同共同市場の貿易額のうち、対中国の割合は24%。EUは現在メルコスルの貿易額の15%を占めるが、自由貿易圏が形成されれば欧州勢の比率が中国に肉薄するかもしれない。
米国最優先に対抗も
だがEU加盟国内ではこの構想についての意見が割れており、自由貿易圏誕…
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週刊エコノミスト
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