トランプ話法の人心掌握力と米有権者が女性リーダーに感じる戸惑いについて 多田博子
有料記事
選挙イヤーであった2024年、世界90カ国以上で重要な選挙が実施され、主要国で与党の敗北が目立った。有権者が変化を希求した中でも、衝撃度が高かったのがトランプ氏の勝利と共和党の両院制覇によるトリプル・レッドの実現であろう。トランプ氏完勝の背景にはさまざまな理由があるが、よく指摘される「二つのI(移民とインフレ)」に対する米国民の怒りの他に、筆者が注目するのはトランプ話法と女性リーダーへの戸惑いである。
トランプ氏は、有権者と同じ目線で話し、人心を掌握する。バイデン氏は「過去最高の1570万人の新規雇用を創出した」とマクロの数字を述べるが、トランプ氏は「あなたの生活が苦しいのは外国のせいだ。自分があなたの職を取りもどす」とかみ砕いて語りかける。トランプ氏の話は誇張や事実誤認も多いが、上から目線感がなく、米国民は頼もしいリーダーとしてトランプ氏の矢継ぎ早の政策に喝采を送る。準備万全で臨んでいる2期目は閣僚候補を迅速に任命、中国、カナダ、メキシコへの関税付加表明などに対し、米国民の6割近くが「良い仕事をしている」との高評価を下している。
トランプ話法は「ディール外交」という形で諸外国との関係にも変化をもたらす。関税を公表した2日後にはカナダのトルドー首相がフロリダに飛んだ。トランプ氏は当選後初の外遊先にフランスを選び、マクロン大統領から厚遇を受け、欧州でも復活をアピールした。首脳レベルの海外訪問は通常数カ月に及ぶ綿密な準備を要するが、トランプ氏のスピードに合わせ、首脳外交がビジネス取引の場に早くも変化しつつある。
1回の失敗で不適に
また、トランプ氏の勝利は、米国民の間に女性リーダー…
残り727文字(全文1427文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める