安倍晋三内閣を徹底検証 従来像を塗り替える大冊 井上寿一
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歴史に関する常套句(じょうとうく)の一つに、評価は後世の歴史家に委ねるというのがある。しかし後世では遅すぎる。今の時点で歴史家に限らず、人びとが評価するべきだろう。安倍晋三内閣もその一例である。
どう評価すべきか。考える手がかりを与えてくれるのが船橋洋一『宿命の子 安倍晋三政権クロニクル 上・下』(文藝春秋、上=2475円、下=2585円)だ。本書は超一流のジャーナリストだけに許された取材に基づいて、主に第2次内閣以降の全体像を描き出している。
安倍内閣は、首相のイメージ(右翼・復古・国権主義・歴史修正主義)と異なる政策を展開している。たとえば靖国神社参拝は一度きりで済ませて、近隣諸国との外交関係の修復を試みる。あるいは「戦後70年」談話を出す。アメリカ大統領の被爆地訪問と日本の首相の真珠湾訪問による日米の歴史的な和解を果たしたのは、安倍内閣の時である。韓国との間の「慰安婦」問題の「最終的・不可逆的」解決を宣言したのも安倍首相(当時)だ…
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週刊エコノミスト
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