豊富なグラビアと逸話で日本美術史を学べる新書 今谷明
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日本美術史の新書版というのは極めて珍しい。山本陽子著『カラー新書 入門 日本美術史』(ちくま新書、1430円)はおよそ280ページのうちの約3割がカラーグラビアという豪華な新書である。
日本美術の出発点は縄文土器から始まるが、土偶と埴輪(はにわ)を経てようやく仏教美術の出現を迎える。古代の仏教芸術は、まず中国の北魏から伝来した仏像彫刻が圧倒的だが、傑出した仏教画として焼損した法隆寺金堂壁画があり、密教の伝来とともに如来・明王の画像や曼陀羅(まんだら)図、来迎(らいごう)図などが出現。そのような仏画がほぼ出尽くした後、平安末期に現れたのが絵巻物(大和絵)で、鳥獣戯画のごときは筆者には現在のギャグ漫画の走りとも思え、日本文化の深さに驚かされる。
平安末期には藤原隆信・信実(のぶざね)らによる貴族を描いた肖像画も出るようになり、同じころ、彫刻では「慶派」の写実的な立像が登場する。南北朝末期は中国かぶれの将軍・足利義満の影響が大きく、室町時代には中国の唐・宋で流行した水墨画が導入され、周文・雪舟など白描の山水画が全盛を極めた。
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週刊エコノミスト
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