名目個人消費の伸びは株高につながる 藤代宏一
デフレ経済が長く続いた日本では、国内総生産(GDP)の名目値と実質値に大きな乖離(かいり)が生じなかった。このため「経済成長率」を論じる時に、両者を区別する必要性に乏しかった。
名目GDPと実質GDPの差は「GDPデフレーター」である。その値を確認すると、1990年代半ばから2013年ごろまでの大半の期間において小幅なマイナスで推移していたことがわかる(図1)。14年と19年ごろにプラスに転じているが、これは消費増税によるかさ上げを含んでいるためで、この時期も実質的には、あまりインフレは発生していなかったといえる。
しかし、新型コロナウイルス禍の終了と、ロシアのウクライナ侵攻に伴う1次産品価格の急騰が重なった22年以降、GDPデフレーターは急伸している。人手不足を理由とする労働コストの増加や、輸送費などの上昇もあり、企業は積極的に価格転嫁を進めていったことがうかがえる。
ここで、GDP統…
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週刊エコノミスト
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