「良い金利上昇」ゆえに通貨安は伝染しない=渡辺浩志
新興国通貨の下落が続いている。市場の関心は、これがトルコやアルゼンチンに限らず、多くの新興国へ伝染していくか否かにある。新興国通貨が下落する原因は大きくは二つ。(1)各国経済の不均衡と、(2)米国の金利上昇に伴う資金流出である。
いま起こっているのは、(1)の各国経済の不均衡だ。トルコやアルゼンチンは経常赤字が大きく、高インフレであり通貨安圧力にさらされている。外貨準備が乏しく通貨防衛力が低いため、投機的な売りの対象になりやすい。これに対する正攻法は、政策金利の引き上げと緊縮財政だ。それによって経常赤字やインフレが是正されれば、通貨安はいずれ止まる。独裁政権が適切な政策を妨げているトルコは不幸な事例だ。
各国経済の不均衡が引き起こすのはあくまでも通貨の「選別下落」であり、他国へ伝染する性質のものではない。一方、国外要因が原因の場合は、新興国間で通貨安が伝染し「無差別下落」を招く。最も起こる可能性が高い経路が、(2)の資金流出だ。
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週刊エコノミスト
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