歴史書の棚 不老不死求める「煉丹術」 東洋の思想や文化に影響=加藤徹
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『西遊記』の初めの話。孫悟空は暴れん坊だった。天界の老子の部屋にしのびこんだ孫悟空は、大量の「金丹」を盗み食いし、不老不死になる。ますます暴れ回るが、結局、お釈迦(しゃか)様の掌(てのひら)にねじ伏せられた。
古来、中国人は、不老不死にあこがれた。秦の始皇帝や漢の武帝は、権力と財力を使って不老不死の秘方を求めた。唐代の知識人も、詩人の白居易が漢詩「思旧」で述懐したとおり、怪しげな薬に手を出して命を縮めた。結局、誰も仏教の「生者必滅」の法則を破れなかった。仏陀(ぶっだ)の掌の中の孫悟空のように。
秋岡英行、垣内智之、加藤千恵著『煉丹術の世界 不老不死への道』(大修館書店、1700円)は、不老不死の実現を目指した「煉丹(れんたん)術」の歴史を紹介し、秘方ゆえ難解で曖昧な『周易参同契(しゅうえきさんどうけい)』や『抱朴子(ほうぼくし)』などの経典の内容を読み解く。著者の3氏は、中国思想の専門家である。
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週刊エコノミスト
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